ヤクルトの大引啓次(左)と荒木貴裕(右) (C)朝日新聞社
ヤクルトの大引啓次(左)と荒木貴裕(右) (C)朝日新聞社

 東京ヤクルトの苦戦が続く。ツバメが飛べない、泥沼から抜け出せない。

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 記憶に新しい5月14日から6月1日までの16連敗。セ・リーグでダントツの最下位。後半戦もなかなか調子に乗れない状態が続く。

「せめて10連敗くらいで終わっていたら、今頃、Bクラスのトップあたりにはいた。そうすればCSシリーズ進出の可能性はあったんだけど……」

 球団関係者が語るように、どこか終戦の気配も漂い始めている。

 しかし負けに負けた。ほぼ毎日、試合のあるプロ野球でここまで負けるのは、やっている選手、関係者、そして見ているファンも我慢比べのようなものだ。

――投打ともに戦える戦力は揃っている。

 戦力的には他球団に決して引けを取らない。

 トリプルスリーの常連、山田哲人。四番も経験した若き大砲の村上宗隆。年間最多本塁打記録保持者、ウラディミール・バレンティン。存在感抜群のベテラン、青木宣親。強力打線は12球団イチと言っても良い充実ぶり。

 投手陣もライアンこと小川泰弘。将来のエース候補、原樹理。ベテラン五十嵐亮太や伸び盛りの若手投手など、決して見劣りしない。

 なぜチームはここまで勝てないのか。

「ここまで負けるのは、はっきり言って選手の責任だと思う」

 大引啓次は厳しい顔で語り始めた。

「試合中のベンチ内もどこか空元気のような感じ。声は出ていても、どこか虚しいと言うか……。勝てそうで勝てないから、不思議な感じもある」

 チームをまとめる立場の大引。自身も打率1割台と苦しんでいる。ツライ時期を過ごしているは想像に難くない。

「一人一人がやるべきことができていない。だから勝てない。僕自身も結果出せてないし……」

「少しチーム全体に悔しさが薄い、と感じることがある」

 荒木貴裕は淡々と話すが悔しさが滲みあふれていた。

「結局は選手一人一人がやることをやれば良い。それをチームとして1つにまとめるのが監督やコーチ。個々が無理にまとまろうと思わなくても、チーム全体としてそれができるなら良い。でも自分がやることすらできないのに悔しさも薄い」

 普段はどんな質問にもしっかり考えて饒舌に答えてくれるナイスガイ。しかし連敗、そして負けが多い現状には考え込む時間も長い。

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「意識が高いチームは勝てる」