車内に畳が敷かれ、掘りごたつ席が並ぶお座敷列車。国鉄時代末期から「ジョイフルトレイン」と呼ばれる団体専用列車に多く見られた車両だが、近年ではその数を減らしている。JR東日本の「華(はな)」と呼ばれる編成もそのひとつで、2019年7月末と8月にはこの「華」を使った臨時快速「お座敷 青梅 奥多摩号」が運転される。乗車券とグリーン車指定車券で手軽に乗れる、お座敷列車の旅を堪能したい。
* * *
■車内に畳が敷かれたユニーク車両
都心発の身近な行楽地として親しまれている奥多摩に向け、今夏もユニークな観光列車が運行されている。
臨時快速「お座敷 青梅 奥多摩号」はJR東日本のジョイフルトレイン「華」を用いた全車グリーン車という豪華編成。乗車には乗車券のほか普通列車用指定席グリーン券が必要だが、特別なトリップを楽しむのにもってこいの列車なのだ。最大のポイントはお座敷列車として運行されているということ。実はこの列車で使用される「華」は、JR東日本の在来線では最後のお座敷車両なのである。
「華」がデビューしたのは1997年。交直流両用の特急用電車として国鉄時代から各地で活躍してきた485系電車の改造によって誕生したジョイフルトレインで、6両編成の室内を和風のインテリアで統一。畳敷きの掘りごたつ席を中心に、各車両にはソファを配したフリースペースがあるほか、先頭車である1号車・6号車の運転室背後のスペースを展望サロンとするなど、快適な居住空間を実現している。
■全国各地で人気だったお座敷列車
お座敷列車(和風列車)はJRグループの前身である国鉄時代末期に登場し、各地で個性的な車両が人気を競った。12系客車をお座敷車両に改造した「海編成」が1980年に九州地区に投入されたのを皮切りに、東京地区に12系お座敷客車「なごやか」がデビュー。同じく12系を改造した「江戸」や「ふれいみちのく」、14系「みやび」、キハ58系「ゆーとぴあ」などの編成が鉄路に華を添えていった。
JR化後も拡充が進められ、JR東日本では485系お座敷電車「宴(うたげ)」や座敷・座席折衷型の「ニューなのはな」などが「華」とともに団体臨時列車を中心に活躍。JRグループのみならず、三陸鉄道や会津鉄道などにも波及するなど、ひとつのブームを築き上げていったのである。
しかし、全国的には需要の変化や車両の老朽化などを受けて1990年代半ばから減少。JR東日本には比較的長く残ったが、「華」の僚友である「宴」が2019年2月23日にラストランを迎えたことにより、JRグループで車内に座敷がある列車はJR北海道のキハ183系「くつろぎ」、JR東日本のE3系新幹線「とれいゆつばさ」と、「華」となった。