昨季の公式戦1試合出場というのは、川島にとってもプロ1年目を除けばキャリア初の経験で、コンディションやメンタル面のコントロールを含めて大いに苦しんだ。実戦の場はリザーブリーグに月1回出るかどうか。Jリーグの場合はサブ組の練習試合が公式戦翌日に組まれたりするが、フランスの場合はそういう配慮がほぼないため、悶々とした思いを抱えながら過ごさざるを得なかった。それでもヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いるナントとの最終戦でピッチに送り出され、ある程度のパフォーマンスを示せたことで、「自分はまだまだやれる」と感じた部分は少なからずあったはず。その感覚をさらに研ぎ澄ませて、新シーズンに勝負を賭けることが肝要だ。

「『実戦間隔が空いてもここ一番で集中力を出せるGK』と言われることもありますけど、自分ではあまり考えたことはないですね。年齢を重ねていることや、今までの積み重ね、経験が出ているところはあると思いますけど、やっぱりトレーニングやリザーブリーグなどの限られた中でイメージを持つしかないし、不安を減らすための努力をするしかない。最後のナント戦は自然体でプレーしましたけど、ヴァイッドの率いるチームとの対戦というのはすごい巡り合わせだなと。その試合に1-0で勝てたのもよかったですね。ヴァイッドからは『困ったことがあったら電話しろ』くらいに言われましたけど、とにかくヴァイッドに会えたことが嬉しかったです。」

 このナント戦でクラブ側やロレイ監督の評価は確実に上がったはず。「エイジなら、いつどんな時でも安定した仕事をしてくれる」という信頼は大きいはずだ。その信頼を深め、序列を上げ、出場機会につなげていくことが今の彼に求められる最大のテーマ。ストラスブール2年目の逆襲に期待したい。(文・元川悦子)