「何もないところから欧州での道を作ってきたという自負はあります。ただ、自分が何かを成し遂げたとは全く思っていない。むしろ『もっと挑戦できることがあるんじゃないか』という気持ちが強いんです。僕にとっては『ワールドカップに3回行かせてもらった』とか『欧州で9年間プレーした』といった事実が成功ストーリーではないし、過去の実績が邪魔だとさえ思う。自分がやるべきことは36歳になった今も変わらないし、高みを目指して努力するだけなんです」

 いくつになっても、どれだけキャリアを積み重ねても、奢ることなくチャレンジャー精神を持ち続ける川島。だが、ストラスブールでの新シーズンが希望に満ち溢れているとは言い切れないところがある。昨季フランスリーグカップ制覇、UEFAヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得へと導いたティエリ・ロレイ監督は引き続き指揮を執っており、マッツ・セルス、ビングル・カマラという川島の出場機会を阻んだ2人の若手GKも残留しているからだ。夏の欧州移籍市場がまだ1カ月あるため、彼らが外へ出ないとも限らないが、チーム内序列はすぐには変わりそうにもない。加えて言うと、ストラスブールは新シーズンに向けてすでに6月下旬から始動しており、7月25日のEL予選2回戦から公式戦がスタートしている。8月11日にはフランスリーグ1部も始まる。コパアメリカ参戦で合流が遅れた川島はいきなり厳しい環境を余儀なくされるのだ。

「とりあえず序列が変わらないことは覚悟しています。試合に出られなかったら結果さえ残せないわけで、そこのもどかしさは少なからずあります。かといって、何が起こるか分からないのがサッカーの世界。欧州に出てからもいろんな状況がありましたし、所属チームがない時期もあった。メスの時も3番手からのスタートだった。今さら自分の中で失うものがあるわけではないし、前進を続けるしかないですね。

 ストラスブールはいいクラブで、運営もしっかりしてるし、スタジアムもつねに満員。今季はELもあるし、挑戦を続けることにやりがいは感じます。昨季は僕が合流した8月末以降、チームが快進撃を続けていて、リーグ戦もカップ戦も好成績を残した。守備がメチャクチャよくて、パリサンジェルマンとやっても向こうが簡単に崩せないくらいの強固な守りを構築していました。セルスもサポーターが選ぶベストプレーヤーに輝きましたし、監督もチームや選手を変える必要がなかった。僕にチャンスが巡ってこないのも理解できる状況でした。ただ、今シーズンはどうなるか分からない。仮に今年も出られないんだったら、先のことはその時に考えればいいと思ってます。冬の移籍市場が開く1月もあるし、来年6月もある。2年契約した以上、その時その時で判断すればいいのかなというくらいに構えています」

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ハリルホジッチ元日本代表監督との接点