東海大甲府サヨナラの場面はまさかの勘違いもきっかけに (c)朝日新聞社
東海大甲府サヨナラの場面はまさかの勘違いもきっかけに (c)朝日新聞社

 今年も甲子園出場をかけた夏の熱い戦いが全国で行われているが、懐かしい高校野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「思い出甲子園 真夏の高校野球B級ニュース事件簿」(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、全国高校野球選手権大会の地方予選で起こった“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「まさか!の勘違い編」だ。

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 臨時代走に代走が出たことが回り回って、“甲子園切符”を左右する事態にまで影響を及ぼしたのが、2004年の山梨県大会決勝、東海大甲府vs甲府工だ。

 1点を追う東海大甲府は6回裏、死球を受けた6番・田中稔也が治療することになり、ルールにより、一番打順が遠い5番・町田慶太が臨時代走を務めることになった。ところが、町田の二進後、宮地勝史が代走に起用されたことから、話はややこしくなった。

 通常なら、5番・町田はそのままで、6番・田中のところに宮地が入るべきなのだが、7回表のスコアボードは、5番レフト・宮地、6番ファースト・田中と表示されていた。間違いに気づいた甲府工側のアピールにもかかわらず、なぜか変更されないまま試合続行となったが、8回2死2塁、田中のカウント1-0のとき、審判団は再び協議。7回の誤りを認めると、本来6番を打つべき宮地がすでに打席を終えていることを理由に、田中の打順を飛ばし、カウント1-0のまま、7番・池田廉から試合再開となった。

 この裁定について、県高野連は「試合中に日本高野連に問い合わせ、8回の時点で間違いとわかった。試合進行を優先させるため、ルールを超えて判断した」と説明した。しかしこの回、田中で攻撃が終了していれば、最終回の攻撃は7番からだったのに、結果的にこの“打順飛ばし”が試合の明暗を大きく分ける。

 9回、東海大甲府は四球と犠打で1死二塁のチャンスをつくり、“応急処置”の結果、打順が早く回ってきた1番・古屋隆行が左翼線に起死回生の同点打。さらに延長11回の末、3対2と逆転サヨナラ勝ちした。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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