西武では2019年3月に001系「Laview」を投入した。大きな側窓とゆったりとした回転リクライニングシートが魅力的であるが、この列車も通勤需要を重視している。西武沿線でも飯能・所沢から特急を通勤利用する人は多い。初代西武特急の5000系「レッドアロー」は6両編成で定員400人、続く10000系「ニューレッドアロー」は7両編成で定員406人となった。3代目となる001系「Laview」は座席配置がゆったりしているため、1両あたりの定員が減少している。そこで8両編成に増やして422人の定員を確保した。

 こうして観光需要だけでなく、通勤需要にも応えたのである。「いままでに見たことのない新しい車両」だが、前面には非常用貫通扉が設けられ、将来は運転区間の拡大も期待される。大胆な見た目に反して、実は意外にも実用的なのである。

 京成電鉄の「スカイライナー」は空港を最短時間で直結、という最重要課題があるため、朝夕限定の通勤ライナーとして同じAE車を使用して「イブニングライナー」「モーニングライナー」を1980年代半ばから運転している。先述の通り、京成上野~成田空港間で410円という均一料金も魅力である。

 このように、有料特急が走っている路線では、定期券利用を認めることで着座通勤を進めることができるが、有料特急が走っていない路線では、有料の座席定員制列車が広まっている。東武では有料特急がない東上線で「TJライナー」を2008年から運行。夕方は30分ヘッドで池袋を発車している。

 西武でも有料特急がない東京メトロとの直通で「S-TRAIN」を2017年から、拝島線に向けて「拝島ライナー」を2018年から運転して好評を博している。このほか、有料特急の設定がない私鉄でも、京急電鉄では「京急ウィング号」を、京王電鉄では「京王ライナー」を運転し、郊外からの通勤客の好評を博している。

 一方JRでは、特急車両の回送を利用した「ホームライナー」を1980年代から運転しているが、近年は特急に格上げされてライナーとしては廃止される例が増えている。また、普通列車のグリーン車連結路線が拡大し、かつては東海道本線と横須賀線のみだったが、東海道本線と上野東京ライン・湘南新宿ラインで直通する高崎線・宇都宮線、常磐線、横須賀線と直通する総武線快速で走るほか、中央線快速にも連結される予定で、着座機会はさらに増える。

 通勤利用客は高齢化で減少し、路線の複々線化や増発、直通運転の拡大で数字上では通勤地獄は解消に向かっているが、なかなか実感できないのが実情である。しかし、疲れが溜まったときくらいは、自分へのご褒美として特急やグリーン車を奮発してみてはいかがだろう。違った環境で通勤するのは気分転換にもなる。(文/高橋 徹)