「他人の不幸は蜜の味」は古今東西同じです。ただ、程度には違いがあると思います。日本ほど他人に関心がある国はなかなかありません。

 その最大の理由は「日本がいい社会」だからでしょう。いい社会というのは「余裕がある」という意味です。

 私が暮らすシンガポールをはじめとしたアジア、欧米など多くの国が、日本よりずっと厳しい社会なので、生き抜くのが大変で毎日みんな自分のことで必死です。

 会社員も数字で厳格に管理されているので、数字を出さないといけません。日本も徐々にそうなりつつありますが、まだまだ情実管理が主流なので、数字を出すより、皆の共通のゴシップに精通してそれで盛り上がって関係を維持構築する方が得なのでしょう。

 また日本では「自分と向き合い、自分の人生を生きる」という志向があまりないと思います。

 学校・学部を偏差値で適当に学び、親や学校や世間の目を気にして仕事を選び、その組織でひらすら同調して雇用してもらうことを前提としています。

 そのため、自分の人生を費やすべきことに気づけるのは、組織を蹴り出されてからになりがちです。実際トヨタなどの大企業が長期雇用をギブアップし始めているのに、まだ多くの人が実感を持っていません。
 
 残念ながら、基本的にネットでの議論は個人攻撃ととらえられます。では、本当に優れた意見を吸収し、思考力を磨くにはどうしたらいいのでしょうか。

 まず、実名を出して、いい内容を発信している人物をフォローすることでしょう。瀧本哲史さんなどお勧めです。匿名でも彼がリツィートしている人は面白いです。

 さらにいえば、議論の力を磨いたり思考実験をしたりする場としてお勧めなのは、SNS空間より古典を読むことです。時空を超えて長く人類に支持されている書籍には学ぶところが大きいです。『君主論』や『孫氏の兵法』や歴史は何度でも読み返してください。(参考:拙著『野蛮人の読書術』」

 このように、日本でのネット空間はほぼ匿名空間なので、建設的な議論は難しいでしょう。時間効率的にいって”玉“がなかなか見つかりません。思考訓練の基礎を築くのも難しいのです。まずは、時空を超えて生き残る世界の名著を読まれることから始めてください。

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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