本田真凜(左)と樋口新葉(右) (c)朝日新聞社
本田真凜(左)と樋口新葉(右) (c)朝日新聞社

 昨季は苦しい戦いを強いられた本田真凜と樋口新葉が、夏の東京で今季に向かう思いを込めた滑りをみせた。

『プリンスアイスワールド2019-2020 Brand New Story東京公演』が、7月19日よりダイドードリンコアイスアリーナで開幕した。水色の衣装で登場した本田は、昨季のフリーに続きローリー・ニコルが振付を手がけた今季のフリー『ラ・ラ・ランド』を演じた。大ヒットしたミュージカル映画の音楽はフィギュアスケート界でも人気があり、今までにも多くのスケーターがプログラムで使用している。その中でも本田の『ラ・ラ・ランド』は数曲をつなげたバラエティに富む構成が印象的で、さまざまな曲想を表現できる本田の魅力が際立っている。

 昨季から拠点をアメリカに移している本田は、世界王者ネイサン・チェンも師事するラファエル・アルトゥニアンコーチの指導を受けている。しかし環境を新しくした成果はすぐには出ず、昨季は試合で思うような結果を残せなかった。全日本選手権でも15位に終わり、日本スケート連盟の強化選手からも外れて今季を迎えている。

 ただ、シニアデビュー当時よりも力強さが増した本田のスケーティングからは、アメリカで積んでいる努力がうかがわれる。3回転ループ・3回転サルコウを跳び、持ち前の華やかさで観客を魅了した本田は、笑顔をみせて演技を終えた。今季はジャンプの安定感という課題を克服し、試合でも笑顔を見せてほしい。

 樋口は黒の衣装をまとい、初めてジェフリー・バトルに振付を依頼した今季のエキシビションナンバー『And I Am Telling You I’m Not Going』を滑った。ジャンプについてはパンクして1回転になってしまう場面が目立ったが、ソウルフルな女性ボーカルに乗り、力強い滑りをみせる。スピード感あふれるスケーティングとダイナミックなジャンプに加え、ここ数年で観る者を惹きつける表現力も身につけた樋口が、また新たな魅力をみせてくれたナンバーだった。

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本田真凜と樋口新葉が本来の輝きを見せれば…