サンフレッチェ広島 C

 開幕7試合で5勝2分けとスタートダッシュに成功したが、第8節のFC東京戦に0-1で敗れると、全て1点差で5連敗を喫した。その最中、A C Lでは下馬評を覆す快進撃で、ラウンド16ではアジア王者の鹿島にアウェーゴールの差で惜しくも敗れたものの、見事な戦いぶりだった。城福浩監督は早い段階から主力を固定せず、競争を作り出すことで選手層は厚くなっている。誰が出てもコンパクトに連動してボールを奪い、素早く縦に仕掛けていくスタイルにおいて、パフォーマンスを落とさない戦いはできている。昨シーズンは夏場を転機に大失速を経験したが、今回はそうした事態には陥らないはずだ。ただ、一人一人が決定的な違いを生み出すことはできていない。後半戦で浮上していくには城福監督の采配もカギだが、若い選手たちの伸びしろにかかる部分も大きい。

大分トリニータ A

 19試合終わった時点で9勝5分け5敗の勝ち点32で5位。前半戦で最も驚きを提供したチームであることは間違いないだろう。片野坂知宏監督はJ2での戦いを支えたメンバーに加え、小塚和季やオナイウ阿道などJ2の他クラブで活躍していたタレントを組み込んで、3-4-2-1をベースとした幅広いポゼッションにロングカウンターを織り交ぜるスタイルで対戦相手を苦しめた。エース藤本憲明の活躍もチームを勢いづけた。第13節の川崎戦と第14節のFC東京戦で初めて連敗したが、総合力で上回る相手に挑んで敗れても下を向くことなく、その後も粘り強く勝ち点を積み重ねている。当初の目標である残留を早い段階で果たし、残りの試合で1ポイントでも多く勝ち点を増やしていければ今後の成長に向けて大きな足がかりになる。ここまで躍進してきて上位フィニッシュを狙わない監督、選手などいないだろう。ACL圏内まで割り込んでいくには前半戦で敗れた川崎やFC東京との直接対決にも勝っていくぐらいのチーム力が必要で、7月27日の等々力での川崎戦は試金石になるかもしれない。

サガン鳥栖 E

 ルイス・カレーラス前監督の更迭は仕方ない。長期的なプランを前提にチームを任せたはずだが、掲げていた理想が早々に崩され、10試合で1得点。途中、アクションからリアクションに戦い方を転換しても結果がついてこなかった。金明輝監督が就任して初陣となるガンバ大阪戦で、いきなり3得点を奪い、そこから3連勝を飾ったが、セレッソ大阪にホームで敗れると今度は3連敗を喫した。ボールを奪う位置、攻撃にかける人数など、空間的なバランスは良くなっているが、課題はゲームコントロールだ。リズムが悪くなると粘り強く立て直せない傾向が強く、0-2で敗れた第19節の広島戦も、先制点をアシストしたパトリックのオフサイドが見逃される不運はあったものの、そこから巻き返せずにズルズル行ってしまう勝負弱さが露呈された結果ではあった。ただ、そこは序盤戦ほどではないものの、得点力不足が続いていることも要因にある。攻撃を引っ張ってきたフェルナンド・トーレスが8月23日の神戸戦をもって現役引退するが、ここまでなかなか結果を出せていないFW陣が奮起していかないと残留までは届かないだろう。(文・河治良幸)

○河治良幸(かわじ・よしゆき)/サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。