その日、夫は近所のパパ友Hさんから、

「お店にキャンプギアを見に行こう」

 というお誘いを受けた。

 私も夫も、まあ、レンタルするにしても、ものを見ておく方がいいかもな、くらいの感覚でいた。

 ある日、ロケの合間に携帯を見ると、夫からメールが届いていた。

 開いてみると、まず、

「テント買っていい?」

 というメッセージ! 緊急事態である。

 さらに、お店に設置されている大きなテントの中で、満面の笑みで座っている夫の写真と、

「最高ーーーー!!!!」

 というメッセージ。

 そうだ、今日がその、Hさんとのデートの日であった。

 そして、

「テントに入って、ここでチビと過ごすことを想像したら、グッと来てしまいました」

 なんて単純なんだ……。

「そのテント、畳んだらどのくらいなの?」

 と、返信すると、すぐに、畳んでバッグに入った状態のテントを肩に担ぐHさんの写真が送られて来た。

 満面の笑みである。

「こんなにちっちゃい!」

 というメッセージとともに。

 この速さでリターンしてくるということは、私にこの質問をされるのを予測していたに違いない。

 それにしても、思っていた以上にコンパクトになっていた。

 スノーピークのエントリー2ルームエルフィールド、お値段8万円!

 その夜、帰宅すると夫は興奮冷めやらぬ様子で、いかにそのテントが良かったか、その日のアウトドアメーカーのお店巡りが楽しかったかを立ち上がってウロウロしながら私に話して聞かせたのである。

 そして、

「テントレンタルするのも1万円くらいするから、8回行ったら買った方が安くつく!」
「ヤフーオークションで良い出物を探すから!」

 などと説得を試み始めた。

「テントに入って座ったらさ、ほんとに、泣きそうになっちゃったの、感動して! キャンプ行ってここでチビと過ごすんだ、って想像したら! 子供って、こんな素敵なご褒美までくれるの? 人生にこんなステキな時間を与えてくれるの? って」

 この言葉が決定打となり、私にとどめを刺した。

「よし! 買おう!」

 2週間後には練習としてのバーベキュー、1月後にはキャンプが迫っている。

 果たして我が家はキャンプのためにどれだけ散財するのか?

 次回、「ママたちに火がついた!」をご期待ください。

※「水野美紀 パパたちの暴走を止めたのはママたちの暴走だった!?」につづく

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水野美紀

水野美紀

水野美紀(みずの・みき)1974年、三重県出身。女優。1987年にデビュー。以後、フジテレビ系ドラマ・映画『踊る大捜査線』シリーズをはじめ、映画、テレビドラマ、CMなど、数多くの作品に出演。最近では、舞台やエッセイの執筆を手掛けるなど、活動の幅を広げている。2016年に結婚、2017年に第一子の出産を発表した

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