■FC東京 A

 これ以上望めないぐらいの戦いぶりで勝ち点を積み重ねて、前半戦を首位で折り返した。長谷川健太監督が1年目から築き上げてきた堅守速攻に加えて、高い位置でボールを動かしながら得点に結びつける回数も増え、相手が守備で的を絞りにくい攻撃を展開した。ただし、最後の味付けは覚醒的な成長を見せた久保建英が担い、ディエゴ・オリヴェイラや永井謙佑がスピードに頼らない形でゴールに絡めたのも、久保がタメとアクセントの両方をもたらしていたことが大きい。その久保はレアル・マドリードに巣立っていった。個の打開力に優れる韓国代表のナ・サンホを新たな主翼として布陣を再構築しており、橋本拳人を軸とした中盤のインテンシティーはJリーグで一、二を争うレベルにある。ただ、川崎との多摩川クラシコで高い位置からプレッシャーをかけられ続け、自分たちのリズムを掴めないまま0-3で完敗したことで、何か上積みをしないとタイトルまで届かないことは長谷川監督も、選手も実感したのではないか。守備の要だった張賢秀のアル・ヒラル移籍も痛いが、渡辺剛や岡崎慎といった選手が一皮むけるチャンスでもある。チームのベースを考えれば去年ほど落下していくことはないと見るが、最後までタイトル争いに残っていけるかは構築力のさらなるアップにかかっていそうだ。

■川崎フロンターレ C

 開幕前は前人未踏の4冠を大目標に掲げていたが、ACLの早期敗退でその夢は潰えた。川崎にかかる期待を考えれば、その時点で最高評価はできないが、国内においても常に厳しくマークされる存在でありながら、18試合戦って1敗できていることはさすがだ。屈強なCBジェジエウを得たディフェンスが安定しており、ここまで1敗しかしていない一方で、引き分けが全体でもっとも多い8試合となっているのは攻守のバランスを気にしすぎてか、相手を崩しきれない試合が多いのが原因。0-0で引き分けた鳥栖戦は象徴的だった。しかし、鬼木達監督もターニングポイントに挙げていたFC東京との多摩川クラシコで前から勝負していく本来の戦い方を再確認し、3-0と勝利したことで流れが変わる期待もある。そのクラシコで前節ベンチ外だったMF下田北斗が大活躍したように、選手層はリーグ随一と言ってもいいほど厚く、勝利の味を知る中村憲剛の復帰も心強いはず。前線も錚々たる精鋭がしのぎを削っているが、ここから継続的に勝利を重ねていくにはエースの確立が重要。やはりJ1100得点を記録し、波に乗ってきた小林悠が筆頭か。

(文・河治良幸)

○河治良幸(かわじ・よしゆき)サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。