■鹿島アントラーズ B

 シーズン中に高い競争力で成長を続けながら、じわじわとチーム力が上がっていくのは鹿島の伝統だが、昨年に比べても多くの主力をケガで欠いた中で、粘り強く勝ち点を積み重ねている。主力を欠いたということは、サブだった選手や新戦力が出場チャンスを得て、実戦経験を積んできたということだ。それによりレオ・シルバなど絶対的な軸のポジションをのぞけば、誰が出ても高水準のパフォーマンスが出せるチームができつつあるようだ。爆発力はないが、競り合いになれば負けないという鹿島の強みは前半の得失点差が+6であるのに対し、後半は+11という結果にも表れている。日本代表クラスの安西幸輝がポルティモネンセ、新10番として期待された安部裕葵がバルセロナと複数の選手が移籍する事態となったが、そういう状況でこそ鹿島の結束力が試されているとも言える。Jリーグ勢として初のACL連覇という目標もあるが、1試合1試合で勝利にこだわる鹿島の強さがここから発揮されていくか注目だ。高い競争力の中でも、真の主軸になっていくべき存在が出てくるかどうかがタイトル獲得の鍵を握りそうだ。

■浦和レッズ D

 昨年は天皇杯を獲得し、ACLとJリーグでの躍進を誓って臨んだ今シーズン。オズワルド・オリヴェイラ前監督は“年間70試合を戦い抜けるチーム作り”を目指していた。しかし、アジアでは粘り強い戦いを見せるものの、リーグ戦で得点のプロセスがなかなか見出せず。キャンプからエース興梠慎三との2トップをテストされていた新戦力の杉本健勇もなかなかフィットできないまま、先制点を奪って逃げ切るプランを実現できず。磐田、名古屋、湘南、広島に4連敗を喫すると、フロントも監督交代に踏み切った。第14節からチームを引き継いだ“組長”こと大槻毅新監督はハードワークをベースにした戦術的なテコ入れと、何よりチーム一丸で勝利を目指すという原則に立ち返ることで一定の成果を出しているが、激しい戦いで競り負けた大分戦、4倍以上のシュートを打たれ“誤審”にも足を引っ張られる形で敗れた横浜FM戦と、後半戦の巻き返しにストップをかけられる敗戦を経験し、なかなか連勝の波に乗れない状態にある。復帰してきたファブリシオが起爆剤になる期待もあるが、ここから数試合で踏みとどまれないと、シーズン終盤は何とか残留圏を確保しながら、カップ戦に切り替えるような状況になってしまうだろう。

次のページ
久保の移籍は痛いが