「自分たちの世代は取り残されている。対症療法的に支援するといっても、もう遅い。唯一、言ってくれているのが、れいわ新選組だろうか。いっそ、安楽死制度を考える会にでも入れようか。供託金なんて気にもしない政治家はいいのだろうが、自分には、そんな貯金もない。田舎には、どんなに求人がないか、一度この様子を政治家に見てほしい。正社員でなくてもいい。1日でも長く仕事が出来る環境に身を置きたい」(武さん)

 こうした武さんたち氷河期世代の声は国政選挙に届いているのか。盛り上がらない参議院選挙。これは東京も地方も同じだ。見せかけの政策、ごまかされた政府にとって都合のいい数字が、透けて見えるからなのだろう。完全なるあきらめムードが漂う。それでも武さんは、「選挙には行く」と断言する。自分の将来を託すために――。

(ジャーナリスト・小林美希)

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小林美希

小林美希

小林美希(こばやし・みき)/1975年茨城県生まれ。神戸大法学部卒業後、株式新聞社、毎日新聞社『エコノミスト』編集部記者を経て、2007年からフリーのジャーナリスト。13年、「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。近著に『ルポ 中年フリーター 「働けない働き盛り」の貧困』(NHK出版新書)、『ルポ 保育格差』(岩波新書)

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