選挙で誰に託せばいいのか。武さんは「本当なら、氷河期世代の支援について労働組合を支持母体にしているような野党が真っ先に言い出すべきことなのに、自民党が言い出した」と憤りを隠せない。

 政府は6月21日、氷河期世代の就職支援を「骨太の方針」に盛り込み、閣議決定した。35~44歳を今後3年間集中的に支援して30万人を正社員化する。この背景にあるのは、社会保障費が現在の1.6倍に膨らむ「2040年問題」だろう。昨年末の外国人労働者を拡大するための入管法改正時、国会でも氷河期世代が放置されていることが指摘されていた。

 そして、いよいよ迫った参院選で人気を取るためか、突然、氷河期世代の問題がクローズアップされたが、遅きに失したという「今さら感」が当事者世代には漂っている。支援策といえば「即効性のあるリカレント教育を」「民間ノウハウの活用」「資格取得支援」「助成金の見直し」など過去に見たことのあるメニューばかりで、政府が打ち上げた花火は、しけり気味だ。

 そもそも、政府が掲げた3年間で30万人の正規雇用は最初から達成可能な数値目標なのではないだろうか。外国人労働を拡大してでも人手を確保したい企業や業界にとって、喉から手が出るほど人はほしい。ある就職支援相談員は「中小零細企業では、引きこもっている状態でもパソコンスキルなどがあれば仕事をしてほしいとさえ言っている。介護なら未経験でも正社員で即採用が決まる状態」と話す。30代後半の非正規雇用は160万人いる(2018年「労働力調査」以下、同)。40代前半は212万人。ここから30万人を正社員化するというのは、決してハードルの高いことではないのかもしれない。

 また、見過ごしてならないのは、40代後半の非正規雇用の存在だ。あえて政府が就職氷河期世代を「2018年時点で35~44歳が中心層」と定義しているところに問題がある。

 バブル崩壊前夜の1990年の大卒就職率(卒業者に占める就職者数の割合)は81.0%だった。バブルが崩壊した91年は前年に採用活動が終わっているため81.3%、92年も余波は小さく79.9%だったが、93年は76.2%、94年は70.5%、95年は67.1%と一気に下降していく。そして2000年に統計上初めて6割を下回る55.8%となり03年が過去最低の55.1%をつけたのだった。6割台を回復できていない05年(58.7%)までは就職氷河期と言える。大卒か高卒か、浪人や留年をしたかどうかで対象者は増減するため、政府の定義がミニマムなところをとっていることで問題の根深さが覆い隠されてしまう。

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40代後半も「就職氷河期世代」