新たな試みを打ち出した楽天・石井GM (c)朝日新聞社
新たな試みを打ち出した楽天・石井GM (c)朝日新聞社

「球場内の一体感を作り出したかった」

 石井一久GMは、同じフレーズを繰り返した。

 開幕前、楽天ファンに衝撃が走った。既存の応援歌すべてを一新、新たな応援スタイルでシーズンを迎えるという球団発表があったからだ。その後、議論を重ねた結果、可能な限り既存曲を残しつつ、新しいものも取り入れていくことになった。

「他球場の真似をしたいわけではない。一体感を作り出すために、いろいろ活用したい。ここの球場はスタンドと選手の距離もすごく近い。一体感が生み出せれば最高の武器になる。仙台の球場は日本一だと、心の底から思っているから」

 まずはじめに提案したのが「一体感」だった。

■「トマホークチョップ」で生み出せる一体感

「頭に浮かんだのはアトランタのトマホークチョップ。ああいうのがやりたい、と応援団の方にも伝えました」

 一体感を作り出すのに欠かせないファクターが、MLBアトランタ・ブレーブスが球場応援に採用している「トマホークチョップ」だった。

 トマホークとはインディアンの斧を意味する。それを用いた応援方法で、スポーツの強豪大学フロリダ州立大が起源とされる。アトランタでは、同大出身で野球とアメフトの二刀流でプロでも活躍したディオン・サンダースがブレーブス入りした頃から使用された。今ではNFLのカンザスシティ・チーフスも使い、国内では高校サッカーの強豪校・流通経済大柏高の代名詞ともなりつつある。

「低音で迫力があって強烈な一体感がある。そんなにピンチでなくても、これやばいんじゃないの、という雰囲気になる。あれはブレーブスにとって相当なパワー」

 石井GMはメジャー時代の経験を語ってくれた。スタンド以上にグラウンドレベルで迫力を感じたという。

「僕がメジャーにいた頃のブレーブスは強かった時期。お客さんもかなり入っていた。普段はザワザワした雰囲気なんだけど、チャンスになると球場全体がトマホークチョップをやる。楽しそうなんです。仮に試合に負けても、ファンはトマホークチョップだけでもやりたいんじゃないかな」

 変更が加わった楽天の応援スタイルにも、トマホークチョップをモチーフにした応援が採用された。重低音の重みのある叫びに合わせ、本家同様、腕を振るスタイルだ。石井GMがぜひとも、やりたかったことである。

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仙台の熱をどうやってチームに伝えるか