彼女のほうも、こんな気持ちでいる。

「ファンが第一だという思いは、今も変わっていない。そして、本当の自分をわかってくれているのがファンだということも。(略)喜んでもらえるから頑張る。そのころも今も、ゆるがない信念みたいなものだ」(『今の私は』)

 それゆえ、ライブでの選曲も衣裳も、ファンの好みを最優先するのだという。逆に、ファン以外の人にまで自分を積極的にアピールするつもりはないようだ。前出の「梅ズバ」同窓会には矢口のほか、飯田圭織や保田圭が出席し、中澤裕子や辻希美がVTRで登場したが、彼女の姿はなかった。昨年「ナカイの窓」で開かれた「モー娘。同窓会SP」でも、顔を見せたのは飯田、矢口、中澤、辻以外に、福田明日香、石川梨華、吉澤ひとみという面々だった。

 ゴマキの場合、いきなりトップアイドルになれたということもあって、ガツガツと自分を売り込む意欲が希薄なのだろう。そこがいつまでたっても大物芸能人っぽくならないゆえんでもあり、得がたい個性である。憧れと親しみとを同時に与える元・国民的アイドル。20年前の救世主は「普通のヤンキー」として淡々と生きつつ、今後もどこか気になる存在であり続けそうだ。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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