共同養育は、子どもだけではなく親にもメリットがある。子どもと同居している側の親にとっては、ワンオペ育児からの解放。子どもが元夫(妻)と会っている間、自由な時間がもてるし、何か買ってもらったり食べさせてもらったりすれば、家計も助かる。

離婚をしたからといって一人で子育てを背負おうとはせず、相手のマンパワーも活用することで、時間にもお金にも精神的にも余裕が生まれます」

 自分に万が一のことがあったときの、リスクマネジメントとしても有効だ。いざというとき、これまでほとんど会っていなかった元夫(妻)に子どもを託すのは不安でしかないが、交流していたのであれば少しは気が楽だ。

「子どもと別居している側の親にとっても、血のつながった子どもとかかわれることはうれしいはず。また、会っている、会っていないに関係なく養育費は当然の義務ですが、子どもの成長を目にしていれば、責任感は高まるでしょう」

 さらに「共同養育」は、社会的な課題を解決する糸口にもなる。最近、親のパートナーによる連れ子に対する虐待などの事件が頻発しているが、それを避けるためにも子どもの実親というもう一つの目が入ることは大切だ。

■「共同養育」があたりまえの社会に

 しばはしさんの願いは、「共同養育」があたりまえのこととして広まることだ。

「『離婚をしても親はふたり』と伝えると、たいていの人は『そりゃあそうだよね』って言うんです。でも、自分が当事者になった途端に忘れてしまう。相手に対する嫌悪感や憎悪感から『私の子どもをなんであんな奴に会わせないといけないの』と」

 しかし、そうして子どもを私物化し、ひとりで抱え込むことには弊害しかない。「ひどい親だから」と会わせなければ、子どもはひどい親だと思い込んで育つ。ひどい親かどうかを判断するチャンスも与えられないのは、子どもにとってどうなのか。子どもに対する暴力などの場合を除いては、どんな親でも子どもにかかわり続けていくべきだ。

「どうしても離婚が避けられないなら、子どもが不幸にならないようにしてほしい。そのためにも『共同養育』があたりまえの社会になってほしいと思っています」

(文/上條まゆみ)