東京駅に顔を出す回数は1日5回。新幹線全体の中でも少数派で、「こまち」を引退した後は本やテレビで紹介される機会も少ない。そのせいか、「お母さん、あの新幹線なに?珍しいね」といった小さな子どもの声が聞かれることもある。

 2019年6月24日、東北新幹線上にて全般検査を終えたばかりの6両編成の列車が試運転を行った。あっという間に通り過ぎていった「6両編成」こそ、E3系R21編成、いわゆる“ピンク線のこまち”である。今や秋田新幹線に乗り入れることはなく、E2系・E5系との併結運転が基本なので、この編成が単独で走るのは実は非常にレアなのだ。そして、R22編成も全検入場しているそうなので、順調にいけば7月にも試運転が行われると思われる。

 この「全般検査」とは自動車でいう車検にあたり、新幹線車両の場合、36カ月または120万km以内に受ける必要がある。期間だけで考えれば36カ月後の2022年まで活躍できるが、現在の運用サイクルはかなりハードで、36カ月よりずいぶん早く120万kmに達すると思われ、おそらく2021年のうちに再び全般検査の時期を迎えそうである。

 そうなると、車齢18年に達する車両をさらに2~3年使うために検査を受ける可能性はかなり低いと思われ、2021年には役目を終えるのではないか、と考えている。

 鉄道車両はいつか必ず引退するものだが、新幹線の交換サイクルは非常に短く、あっという間に訪れる。大好きな車両があるなら、ぜひ乗りに行ってほしい。そして、活躍する場が変わっても走っている限りは最後まで見守ってあげてほしい。(文・松原一己)

○松原一己(まつばら・かずみ)/大阪府枚方市出身。デザイン表札やステッカー制作を手がける日本海ファクトリー代表。趣味で行っていたトレインマークのトレースが高じて、ウェブサイト「愛称別トレインマーク事典」を運営する。著書に『特急マーク図鑑』(天夢人)、『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社・共著)。