その中で、今なお目立つ活躍を見せているのが“乗って楽しい列車”に生まれ変わった「とれいゆつばさ」のR18編成と「現美新幹線」のR19編成であろう。それぞれに個性的な、まさにオンリーワンの列車として週末を中心に活躍している。「とれいゆつばさ」は“走る足湯列車”として福島~新庄間の在来線区間のみで営業を行っている。「現美新幹線」は“世界最速芸術鑑賞”というキャッチフレーズで、上越新幹線北部の区間で走っている。いずれも、まだまだ活躍を続けてくれそうだ。

 また、R25・R26編成は、R23・R24編成から抜き出した車両を加えて7両編成に組み直されてL54・L55編成となり、主に山形新幹線の「つばさ」として活躍をしている。車体色は別物、編成記号も“R”ではなくなっているが、「こまち」の血筋を継ぐ車両であり、新幹線として高速運転を続けていることは間違いないが、長年「こまち」で使用されてきた車両なので、山形新幹線全体の車両置き換えが決まったら早々に離脱しそうだ。

 もっとも残念な結末だったのがR20編成で、車齢も13年に満たなかったのに編成ごと廃車となった。2014年3月の引退を控えた数カ月間、「ありがとう」の文字と桜の花をあしらったラッピングがこのR20を含むいくつかの編成に施されたのが最後の花道となった。ピンクのラインの車両なので、桜の花がよくマッチしていたのが懐かしい。

 このようにさまざまな結末を迎えたR編成なので、E3系「こまち」は表舞台からすっかり消えたと思われていても不思議ではない。しかし、2003年後半に新製されたR21・R22の2編成は、「こまち」ロゴはないものの、当時の姿を色濃く残して奮闘を続けている。

 では、なぜ秋田新幹線を去った今も活躍の場があるのだろうか? それは、東北新幹線の高い需要と列車本数、ホームの長さと関係がある。東京駅のJR東日本の新幹線ホームは2面4線で、そこを東北・北海道・山形・秋田・上越・北陸の各新幹線が分け合っている。そのため、列車本数を増やすには限度があり、需要を満たすには編成を長くして対応するしかない。

 JR東日本の新幹線車両は、標準的な需要から8~10両を基本としている。一方で、東北新幹線の主要駅は、最長で17両編成(フル規格+ミニ新幹線)が収まる構造で、E5系とE6系が連結した17両編成が停車できる。そこで、通常は「はやぶさ+こまち」として運転している17両編成を、そのままの姿で需要が多い時間帯の「やまびこ」や「なすの」として運転し、座席数を確保しているのである。

 とはいうものの、E6系をフル回転して那須塩原以南のそうした需要に応えようとすると、本業である秋田新幹線の運用に支障が出てしまう。そこで、その役割を担うのが「こまち」色のE3系2編成なのである。現在、定期運転が毎日2運用組まれているが、2編成しかないのでまさにフル回転で動いている。

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「こまち色」全検出場。今後の見通しは?