最近では、面接において配慮を求めたいという人もいます。就職活動においては入社後の仕事との関係もあり難しいですが、たとえば英語検定の2次試験などの口頭試験において、「吃音の症状があることによって減点しないでほしい」「しゃべるのに時間がかかるので時間を与えてほしい」ということを診断書に書くこともあります。

 なかには障害者手帳を希望される方もいます。吃音は障害なのか、という意見に対しては、そもそも障害とは何なのかというお話になると思います。難しいですが、私の中では、「普通の人ができることが普通にできなくて困っている」というのは障害と捉えてもいいのではないかと思っています。

 悩みを抱える人のなかには、吃音のために話すこと自体を怖がってしまう人もいます。相手の反応が怖い、そもそも言葉につまってしまう自分が嫌など、人によって理由は異なりますが、これは医学的には社交不安障害という精神疾患を合併した状態といえます(※1)。

 社交不安障害を確実に予防する方法というのはありませんが、言葉をつまらせながらも楽しく話ができた、という体験を積んでいくことが、コミュニケーションに対する障壁をつくらないという意味では、大事ではないかと思います。長期的には、親御さんや学校・会社など、当事者以外の人たちとも「思ったことをしゃべろうよ」という考えを共有し、吃音に対する理解を得ていくことです。そのために本人へのカウンセリングと、社会全体への啓発は両輪で進めていく必要があると考えています。

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「見えない障害」配慮されることは恥ずかしくない