※写真はイメージです(写真/getty images)
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富里周太(とみさと・しゅうた)医師/国立成育医療研究センター・耳鼻咽喉科。映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」吃音監修
富里周太(とみさと・しゅうた)医師/国立成育医療研究センター・耳鼻咽喉科。映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」吃音監修

 医学的には「言語の流暢(りゅうちょう)性障害」と定義される症状・吃音(きつおん)。タイプはさまざまだが、言おうとする言葉の頭の部分を繰り返してしまう「連発(繰り返し)」の症状が一般に知られている。しかし、実は成人の100人に1人が吃音当事者であることはあまり知られていない。そんな吃音に関連した映画や本が相次いで刊行されている。そこで描かれる困難や苦悩にはどういったものがあるのだろうか。吃音をもった高校生の青春映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の監修者である、国立成育医療研究センター・耳鼻咽喉科の富里周太医師に、「混同しがちな二つの悩み」について聞いた。

*  *  *

 2011年アカデミー賞で4部門を受賞した「英国王のスピーチ」は、1936年から在位したイギリス国王・ジョージ6世が、吃音をどうやって克服していくかを描いた映画だ。富里周太医師は、「これが大きなターニングポイントだったという印象があります」という。

 その後、書籍では伊藤亜紗著『どもる体』や近藤雄生著『吃音 伝えられないもどかしさ』、「吃音ドクター」として著書も多い菊池良和著『吃音の世界』など、一般向けの吃音の本が相次いで刊行されている。医学書や養育のための専門書などでは以前から扱われていた題材だが、これだけ一般向けの本が出てくるのは、これまでになかったことだ。

 昨年には、そんな吃音に悩む人の苦悩を描いた青春映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」が公開された。吃音をもった高校生の少女・大島志乃が、吃音で自分の名前が言えないことを周りに笑われ孤立するも、同じくクラスに溶け込めない少女・岡崎加代とバンドを組み、音楽活動を始めるというストーリーだ。12年に単行本化された同名の漫画を原作としている。

 なぜ吃音は、近年になってこれほど注目されてきたのだろうか? 同映画で吃音監修をつとめた富里医師は、「若い思春期の苦悩の象徴として描きやすく、物語性があるのではないか」と分析する。そしてその上で、こうした吃音のような「生きづらさ」を抱えた人たちへの社会の目線が変わったことも大きいのではないか、と指摘している。

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