――子どもの吃音の治療としては、どのようなことができるのでしょうか?

富里:治癒率を上げる目的の治療法はいくつかあります。またそれ以降の年齢でも、ある程度吃音をコントロールする治療法はあります。

 たとえば小さな子どもであれば親御さんがかなり心配されるので、まずは吃音について先ほどのような説明をすることが大きな軸になります。周りの環境を整えたり、子どもの発話に対して評価を与えたりするのですが、多くは親を介しての治療になります。

 そもそも言語は親が話している様子をまねして覚えるものですので、子どもが吃音で悩んでいるのであれば、親の理解が必要になります。例えば「つっかえないでふつうにしゃべりなさい」などとプレッシャーを与えない。あるいは必要以上に「落ち着いてゆっくりしゃべりなさい」と強要するなどの働きかけはよくないということを、まずお伝えしなければなりません。

 親御さんは良かれと思って矯正しようとする部分もあるとは思います。多くの方は発音についてお子さんにアドバイスしがちです。たしかに、小さい頃に吃音があったけれども、大人になるにつれてなくなっていくという人もいます。しかし、そのプロセスや理由はまだはっきりとは解明できていません。であれば、確実な治療ができないとしても、なにか周りからケアをしてあげることが必要です。

――親は子どもに対してどう接すればいいでしょうか?

富里:自分のふるまいが吃音に影響するかを気にする親御さんは多いですね。ただ吃音は発声を頑張れば頑張るほど治るというものでもありません。「女の子のほうが治りやすい」「親が治癒しなかった吃音を持っている場合は治りにくい」といったデータもあるので、治るかどうかは本人の体質による部分が大きいと考えています。

 吃音の発症や増悪が、環境要因によるという考えもあります。ただ繰り返すように「このような環境はよくない」というようなことは何もわかっていません。たまに「(親御さんに吃音があって)自分の吃音を聞かせると、子どもも吃音になるんじゃないか」と気にされる親御さんもいますが、そういったことは科学的には証明されていません。

 いろんなアプローチはありますが、その先の、吃音とともにどう生きるかという視点も大事です。まず、お子さんに吃音があったとしても話し方ではなく話の内容のほうを聞いてあげてください。将来的に吃音があっても、人前で話すことに恐怖や不安を覚えないようにすることが、大事だと思います。

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「治らなかったとき」も考慮して周囲の理解を得る