■外部からの働きかけで子どもを動かしてはいけない

 つまり、親が「やってはいけない」とわからせたいことがあるのなら、ストレートに「してはいけない」と怒ったり、「やらなかったらこれを買ってあげる」とご褒美でつったりするなど、外部からの働きかけで子どもを動かしてはいけないのです。

 子どもが自らの心の中で、一度でも「これはしてはいけないことだ」「これはすべきことだ」と納得させるのがポイントとなります。

 それならば、親がすべきことは、子どもが「心を動かす」ように誘導することです。私の場合、「うそはいけないことだって、○○くんならとっくに知っているもんね?」と言って、子どもの自尊心をくすぐっています。

 また、うそをつかれたときには、「まさか○○くんがそんなことをするなんて……」と、大げさに絶望します。自分の心の中で子どもが「うそをつかないようにしよう」と自発的に納得することができたら成功です。そして人は、一度「自分はうそをつかない人間だ」と思うと、そのイメージを今後も維持しようと努めるという習性をもっています。

 もちろんこれは、子どもだけでなく大人にも通じる話です。私は自分のことを「すぐサボりたがる人間だ」と思っています。おかげで、なにかの作業中に疲れてくると、「このまま休んでもいいのではないか?」と眠ってしまい、後でギリギリになり困ることがあります。

 大人になってからも、うまく誘導して「君は最後までサボらない人間だ」と思わせてくれる人がいると、ありがたいのですけどね。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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