女性戦闘員たちは化粧やマニキュアも忘れない。ネックレスやイヤリングも身につけていた。町中に出て自由に買い物をすることはできないため、こうした服や化粧品は、女性戦闘員の代表が出入り業者から購入し、各戦闘員に配布されていたようだ。

■普通の女性が引き金を引く「戦争」の怖さ

 カラフルなシャツを着込み、マスカラや口紅を塗り、お気に入りの音楽を楽しむ。そんな女性戦闘員たちの姿は、世界のどこにでもいる普通の女性たちと変わらない。だが、彼女たちと話をしながら、私は強烈な違和感を覚えずにはいられなかった。それは彼女たちの横に、いつも黒く光る自動小銃や手投げ弾が置かれていたからだ。

 化粧に余念がない「普通」の女性たちが、大きな銃を手に取って敵を撃ち殺す。あるいは撃ち殺される。目の前の光景は、そんなコロンビアの現実をまざまざと映し出していた。

 もし私が敵ならば、彼女たちは私に向けて迷わず引き金を引くのだろうか。命令があれば、私を誘拐し何カ月も監禁し続けるのだろうか。戦争が持つ非人間性に震えると同時に、彼女たちをそんな状況に追い込んだ混乱の根深さをのぞき見た気がした。

●著者プロフィール
田村剛(たむら・つよし)/1976年、札幌市生まれ。朝日新聞記者。2005年入社。青森総局、横浜総局、東京社会部を経て、14年9月から18年3月までサンパウロ支局長として中南米特派員