(イラスト/今崎和宏)
(イラスト/今崎和宏)

(イラスト/今崎和宏)
(イラスト/今崎和宏)

 ジャニーズ事務所は7月1日、ジャニー喜多川社長が6月18日に体調の異変を訴え、救急搬送された病名は、解離性脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血だったと発表した。くも膜下出血は、脳卒中の一つで、主に脳の動脈の分岐部にできるこぶ、脳動脈瘤が破裂することで発症する。3分の1は死亡、約3分の1は後遺症が残るといわれている。週刊朝日ムック「脳卒中と心臓病いい病院」では、原因や症状、後遺症について専門医に取材しており、ここではその一部を紹介する。

【写真】会見でジャニー氏の入院について発表した嵐

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病気 自覚症状はほとんどなく突然破裂する

 頭蓋骨(とうがいこつ)と脳の間には3種類の膜があります。頭蓋骨に密着している硬膜、その下にあるくも膜、さらに下にあり脳表面に密着している軟膜です。軟膜とくも膜の間の隙間(くも膜下腔)に脳脊髄(せきずい)液があり、脳はそこに浮いたような状態になっています。

 脳動脈瘤(りゅう)は、くも膜の内側のくも膜下腔を走る直径2・5~5ミリの太い動脈が枝分かれする部分にできる瘤(こぶ)のような膨らみです。破裂しない限り自覚症状はほとんどありません。

 獨協医科大学越谷病院の病院長の兵頭明夫医師はこう話します。

「心臓からの血液を送り込む脳動脈は高い圧力で血液を流すので、血流や血圧の影響で動脈の分岐する部分に負荷がかかり、風船のように徐々に膨らんでくることがあります。その部分の血管壁は他の部分よりも薄くなり、血流の圧力に耐えきれずに破れてしまいます。これが、くも膜下出血です」

 くも膜下出血は発症した人の約3割が死亡するといわれます。JACC Studyという調査研究によると、くも膜下出血による死亡者は年代では男性は40代、50代に多く、女性は60代以上が多いという傾向がみられます。

 くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂以外の原因でも発症することがありますが、その割合は2割程度で、大半は脳動脈瘤の破裂によって起こります。また、動脈の分岐していない部分に脳動脈瘤ができることもあります。

 昔は脳動脈瘤があっても破裂しない限り気づかなかったのですが、近年はMRI(磁気共鳴断層撮影)、MRA(磁気共鳴血管撮影)などの画像検査が一般化し、脳ドックの普及もあって直径2ミリ程度の小さな未破裂脳動脈瘤でも発見される割合が高まっています。

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