おそらく、彼には役者体質というか、その気になりやすいところが大なのだろう。そのためか「新選組!」の劇中で恋をし、結婚するはしのえみと現実でも噂になったりした。その前には、映画「That’s カンニング! 史上最大の作戦?」で共演した安室奈美恵ともディズニーランドデートを報じられている。ちなみに、政界進出後には、一般女性とのスピード離婚や、別の一般女性との事実婚(子供も誕生)が発覚。お調子者ぶりというか、旺盛な行動力はプライベートでも健在のようだ。

■実は頭を使える人

 ただ、彼はけっして直情径行なだけの男ではない。「元気が出るテレビ」についても、最初のオーディションで組んだ仲間ともめたりして落ちたことから、作戦を練り直したという。前出の本には、こう書かれている。

「前回の反省から、あまり自意識の強いやつと組むのはよくないなと思って。むしろ自分がコントロールしやすい子たちがいいなと。で、どっちかというとクラスの中ではあんまり目立ってなくて、でも目立ってるグループに入りたいと思ってる子たちをピックアップしたんですね」

 事務所に所属するにあたっても、デビュー映画のプロデューサーから、大手では性格的に無理だと言われ、紹介してもらった「ちっちゃくて、コツコツやってくれるところ」を選んでいる。バラエティから芝居メインに切り替えたのも「費用対効果で言えば、割の合わない仕事」だが「長い期間やっていけるっていったら、やっぱり役者」という判断からだった。そんな柔軟性や先見性もあるからこそ、大物にも可愛がられ、生き抜いてこられたのだろう。やりたいことをやるためなら、頭も使える人なのだ。

 やりたいことについては、デビュー2年目の時点で、政治への関心も口にしている。芸能誌の「明星」で「政治家を目指すんじゃ」などと語っていた。やりたいことをやるためなら、芸能人とか政治家とかの肩書にはこだわらないし、手段もなんでもありということなのだろう。思うに、この何をやっても山本太郎というスタンスこそが、芸能人としても政治家としても存在感を発揮できるゆえんだ。異業種からの政界進出という意味では、アントニオ猪木あたりに近いのかもしれない。

 とはいえ、現時点での注目度はそれ以上のものである。ただ、それは山本が「面白い政治家」だからだ。これがエンターテインメントの世界なら「面白い芸能人」はそのまま「いい芸能人」となったりもするが、政治ではそうもいかない。そもそも、2期目の当選があるかどうかもわからないなか、彼ははたして「いい政治家」になっていけるだろうか――。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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