とんねるずは、若手芸人の登竜門的番組だった『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)でチャンピオンに輝き、芸能界デビューを果たした。ほかの芸人たちが舞台で磨き上げた漫才、コント、ものまねなどのしっかりした芸を演じている中で、とんねるずは学生時代の悪ふざけをそのまま持ち込んだような荒々しく勢いのある「部室芸」で強烈な印象を残した。

 その後も『オールナイトフジ』(フジテレビ系)では生放送のスタジオで暴れ回ったり、客席に飛び込んで観客に襲いかかったりするなど、無軌道な暴走を続けた。この頃のとんねるずは「芸人」というよりも「クラスのお調子者」という雰囲気を漂わせていた。教室や部室にいるヤンチャ坊主が、テレビの世界に侵入して暴れ回っている、という感じが新鮮だったのだ。しかも、2人とも長身で顔もスタイルも良く、若い女性にも人気があった。こんなキャラクターの芸人はそれまでのお笑い界には存在しなかった。

 若者のカリスマとなったとんねるずは、お笑い界に続いて音楽界に殴り込みをかけた。歌手としてデビューを果たし、『一気!』『雨の西麻布』などヒット曲を連発した。アイドルやミュージシャンと肩を並べて音楽番組にも出演するようになり、そこでも好き放題に暴れた。1992年にリリースされた『ガラガラヘビがやってくる』はミリオンセラーになった。

 90年代後半には、番組スタッフと共にダンスユニット「野猿(やえん)」を結成した。当時は珍しかった男性のダンスアイドルユニットとして人気を博し、10枚のシングルと3枚のアルバムをリリース。『NHK紅白歌合戦』にも出場し、武道館コンサートも成功させた。

 このように、とんねるずはもともと伝統的な「芸人」のイメージに縛られず、自由に活動することで独自の地位を築いてきた。若手の頃には、中高年世代にはキワモノ扱いされ、「何が面白いか分からない」などと眉をひそめられながらも、同世代の若者から熱狂的な支持を受けてきた。そんな彼らは、現代におけるユーチューバーの先駆けのような存在だったのではないかと思う。

『とんねるずのみなさんのおかげでした』が終了して、彼らがテレビ以外の場所にも新しい「遊び場」を求めるのは決して不思議なことではない。とんねるずとは、既存の枠組みを乗り越え続ける「永遠の越境者」だからだ。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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