■ずっと歌い続けて、いつの間にかいなくなるのよ

 子役時代からステージに立ち続け、戦後の日本復興では民衆の“心の支え”になったと言っても過言ではない。それ故に今でも人々の心の中で永遠のスターとなっているのだろう。

「当時、新宿にあったコマ劇場の公演の取材に行きましたが、ステージリハとビデオ用の録画は別日程で抑えられていました。そんなとき、曲と曲の間にふとスタッフに『ねえ、わたしきれい?』って、聞くんです。絶妙な間合いとコメントチョイスに、一瞬場がゾワっとしていました」(前出の芸能記者)

 昭和の歌姫が残した名言も数多い。

 なかでも有名なのは「私が生きられる場はここなの。なぜなら、私はそのために生まれて来たのだし、そのために生きてきたんですもの。そしてきっと、私の幸せもここにしかないのでしょう」と述べた言葉。

「私はただ、歌が好きなだけ」と語った美空ひばりは、「ひばりに引退はありません。ずっと歌い続けて、いつの間にかいなくなるのよ」の言葉通り、歌に生き、そして歌に死んだ

「ひばりさんは、どんな取材でもきっちりと答えてくださいました。晩年、体調がすぐれない中でも、それをまったくみせずにステージに出たことは有名な話ですが、記者質問も1社1問でしたが誠実に対応してくださった。あるとき、ファンの反応について聞いたところ『実は最初はわからなかったんだけど……ステージが始まったらはっきりとわかりました』と答えてくださったことがあります。スタッフだけでなく、一番はファンを大事にされていた方だったことがよくわかりました」(同)

 数々の名曲とともに、残された名言もまた今も多くの人の心に響きわたるだろう。(今市新之助)