長友本人も「カタールまではもちろん行くつもり。(現在1歳の)息子が大きくなって、父親が日本代表選手だということが分かるまで頑張る」と意欲満々だ。妻で女優の平愛梨さんとの間に間もなく第2子が誕生することもあって、彼の代表へのモチベーションは高まるばかりだ。メディア受けするインパクトの大きな発言をしてくれる「広報部長」が代表チームで長く活躍してくれることを多くの人が歓迎しているのも確か。ただ、日本サッカー界や日本代表の将来を考えると、手放しで喜べない部分もある。

 2月1日の2019年アジアカップ(UAE)決勝・カタール戦に敗れ、タイトルを逃した後、「もう僕らベテランは代表に呼ばれないかもしれない」と長友は危機感を吐露したが、そういう混とんとした状況にならなければ、チームは強くならない。今回のコパ・アメリカで久保や三好康児が活躍し、2列目はこれまで以上の大激戦区になっているが、左サイドバックはその状況には程遠い。「長友からポジションを奪ってやるんだ」という20歳前後の若手が次々と出てくるようになって、森保ジャパンは本物のレベルアップを遂げられる。そのためにも、杉岡や東、鈴木らにはこれまで以上の奮起が求められるのだ。

「コパ・アメリカで一番感じた課題は、ボールを奪った後の判断。失う回数も多かった。このレベルの相手だとすぐ寄せられるし、タテパスも通らない。そこのテンポを上げていくことが大事だと思います。全てのアベレージを上げていかないと世界では戦えない。ここで感じた世界基準を忘れないでやっていきたい」と生真面目な杉岡が自戒を込めて語った通り、欧州で活躍する長友を上回るプレーができるようにならなければ、ポジションは奪えない。

 それはA代表に何度も呼ばれている佐々木翔や山中亮輔らにも言えること。「大迫依存症」の次は「長友依存症」にならないように、今回のコパやU-20ワールドカップ、東京五輪世代が出場したトゥーロン国際トーナメントで活躍した舩木翔らも含め、間もなく33歳になる偉大な左サイドバックの牙城を誰が崩すのか。その担い手にいち早く出現してほしいものだ。(文・元川悦子)