JR東日本は当初、只見線会津川口~只見間の鉄道による復旧には100億円を超す多額の費用がかかり、この区間の利用者も平均通過人員が1日あたり49人(運休前年の2010年度)、代行バスの利用者も平均55.6人(14年度)と極めて少ないことから、廃止・バス転換が適当との方針を示していた。

 しかし、福島県と地元会津地方の17市町村はあくまで鉄道による復旧を訴え、約21億円に達する「只見線復旧復興基金」を積み立てるなどの対応をとった。JR東日本側もこれを受け、第八只見川橋梁復旧の工法見直しによる費用の減額などの検討に入った。

 そして2017年6月19日、福島県とJR東日本は「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意及び覚書」を締結する。

 それによると、県は第三種鉄道事業者となって運休区間の鉄道施設と土地を保有し、JR東日本が第二種鉄道事業者として自社が保有する車両を運行する、いわゆる「上下分離方式」を採る。列車の運行は運休前の1日3往復を基本とする。復旧工事はJR東日本が行い、費用負担は当初、県と地元17市町村が3分の2、JR東日本が3分の1とするとした。当時の地元紙・福島民友には「熱意と覚悟 JR動かす」の大見出しが躍っている。

 その後の18年7月には「黒字鉄道事業者の赤字路線に対しても被災復旧費用の一部を国が助成する」との、鉄道軌道整備法の改正によって国が復旧費用の3分の1を負担することになった。これにより只見線運休区間の81億円と見込まれる費用は、国・県と関係自治体・JR東日本がそれぞれ27億円を拠出することになった。

 また、年間2億8000万円と見込まれる復旧後の運営費は、地元負担分が2億1000万円。これを県が7割、地元17市町村が3割を負担することも決まった。県と地元自治体にほぼ永続的な支出が続くことを疑問視する一部地元住民の声はあるものの、只見線の鉄道による復旧がなされることへの安堵(あんど)感は大きい。

 また、福島県は只見線全線復旧後の利用促進に向け、「只見線利活用計画」を策定した。重点項目として「目指せ海の五能線、山の只見線」を筆頭に、学習列車の運行や駅発着のバスなど二次交通の整備、魅力発信など、さまざまなプロジェクトの推進を図ることにしている。(文・武田元秀)