広島カープの磯村嘉孝 (c)朝日新聞社
広島カープの磯村嘉孝 (c)朝日新聞社

 広島カープは優勝候補の筆頭だが、まだ本調子には遠いようだ。勝ち始めれば連勝するが、粘れずにあっさりと負けてしまうことも。それでも上位に君臨するのは、地力が備わっているということだろう。

 オフには、巨人移籍した丸佳浩の不在が大きくクローズアップされた。しかしそれを補って十二分な選手も現れはじめている。攻撃面で目立っているのが磯村嘉孝だ。

ーーまずは捕手としてチームでの存在場所を確保する。

「もともと打撃は好き。でも、まずは捕手としてやらないといけないこともある」

 名門・中京大中京高で2年時春からクリーンアップを任され、同年夏の甲子園では打率.350、2本塁打で全国制覇の原動力となった。

 プロ入り後は10代でスタメン出場を果たし、二軍でも着実に結果を残してきた。しかし広島には会沢翼という球界きっての「打てる捕手」がいる。それを理解した上で、まずは捕手としての役割を最重要課題としている。

「僕より打撃の良い選手は多い。僕がチームに貢献できるのは、しっかり守ること。捕手としてのレベルを上げないといけない」

 一軍での立場はあくまで3番手捕手。会沢やベテラン石原慶幸に何かあった際のバックアップ。打撃に関しては坂倉将吾の評価も高い。 連日、試合前練習で捕手の練習を繰り返す姿からも、現状は伝わってくるようだった。

ーー結果を出して試合に出ることで全てが好循環。

 打っている。ヒットが止まらない。プロではどちらかといえば守備のイメージがあった磯村の打撃がここに来て覚醒している。5月には「ミスター赤ヘル」山本浩二さんの9打席の球団記録に迫る6打席連続安打。交流戦に入っても代打成功率は8割を超えていた。

「結果が出て打席数が多くなったことが、技術、メンタルの両方に良い影響を与えている」

 磯村を常に見続けている、迎祐一郎打撃コーチは、決して偶然ではないという。

「もともと長打力もあって打撃は良い。変えられる、二軍へ落とされる、という焦りを感じなくなると、選手はリキまなくなってゆとりが持てる。タイミングをゆったり取れるから、慌てて投球を追いかけない。自分のポイントでしっかりコンタクトできている」

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三振の多さも打撃の持ち味?