まず「自然紋」から見てみる。月・月星(つきぼし)は信仰の対象として古くから神社関係を中心に使われてきた。最も多岐にわたっているのが「植物紋」。四季の移ろいと共に生きてきた日本人としたら当然だろう。生命力の強い草花に、子孫繁栄の願いが込められている。代表的な植物紋は片喰(かたばみ)紋で、繁殖力が強く、根付くと群生することから、世襲を大事にした武将にも好まれたようだ。「動物紋」で多いのが鳥をかたどったもの。神の使いともいわれる三本足の烏(八咫烏=やたがらす)は、日本サッカー協会のシンボルマークにもなっている。日常生活で使われる神仏具や武具、家具などの「器材紋」も種類が多い。力強くつなぎとめるという意味から、錨のマークは人気があったようだ。「建造紋」は生活に関わる建築物等をイメージしている。井戸にかかわる井桁などはその代表だ。古くから伝わる幾何学文様などを紋章化したのが「文様紋」で、鱗や七宝など、やはり縁起がよいとされるものが多い。

■現代の家紋あれこれ

 和装の正礼装に入っている家紋や墓参りに行って刻まれている家紋に気づくことがきっかけとなることが多いが、名字に関するテレビ番組の人気が近ごろ高まっているように、自分のルーツをたどりたいという風潮になっていることも事実のようだ。明治になり、平民も名字をもらえるようになってから、新たに家紋を定めた家も多いと聞くが、調べてみることでまた得られることもあるのではないだろうか。

「女紋」については、関東、関西で認識が違うことがあり一概には言えないが、女性が紋を使用するようになったのは江戸時代中期だとされる。武家や商家によって伝わり方も違うが、母から娘、そして孫娘へと姓が変わっても受け継がれていく母系紋や、その家の紋を女性らしくアレンジしたアレンジ紋、また、女性なら誰でも使える通紋がある。他に自分専用の私紋、着物などに使う洒落紋などもある。こうしてみると案外、現代の女性の方が自由に紋と関われるのかもしれない。

 知りたい家紋の情報をすぐに表示してくれる無料アプリやウェブサイトもあるので利用してみては。

・名字由来netアプリ「家紋」
・家紋ドットネット
・大宮華紋
・家紋無双

※参考資料:『日本の家紋大事典』森本勇矢著・日本実業出版社

(文・下平紀代子)