そんな厳しい投手事情だからこそ松坂が救世主になるのではないか?という期待はあるかもしれないが、現実はそんなに楽観視できるものではない。昨年の松坂の成績を改めてみてみると11試合に先発して6勝4敗と勝ち越してはいるものの、QSは5回と登板した試合の半分以上は先発投手としての役割を果たせていない。また投球回数は55回1/3であり、平均すると5回で降板という数字が見えてくる。今年も二軍でのこの2試合のピッチングを見ても劇的に状態が改善しているとはとても思えず。昨年と同等程度の成績というのが妥当な期待値と言える。

 前述したように4枚目以降の先発投手がイニング数を稼げない状況でローテーションに松坂が加わることになると、また6回から継投というパターンが増えてリリーフ陣に負担がかかるのは目に見えている。他の投手も同じくらいしか投げられないのだから、集客力のある松坂を登板させた方が球団の利益にはプラスになる。という考え方もあるかもしれないが、チームの将来を考えるのであれば今後の成長が期待できる若手投手に多く抜擢の機会を与えるべきではないだろうか。

 そんな中で松坂を起用するのであれば、提案したいのは先発した投手が早く崩れた時の第二先発である。ここまでも勝野、清水などの若手が5回を持たずに降板したケースがあったが、そういうタイミングでマウンドに上がり、3~4回程度を投げて流れを持ってくる役割を松坂が果たすのである。実績のあるベテラン、それも人気抜群の松坂が試合の中盤を締めることで球場、ベンチの雰囲気も大きく変わるのではないだろうか。これはあくまで一つの方法であるが、ただ闇雲に先発ローテーションでの復帰ばかりを考えるのではなく、チームの将来を見据えつつ松坂の経験を生かすような起用法を首脳陣にはぜひ検討してもらいたい。(文・西尾典文)
(※今季の成績は6月17日終了時点)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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