先輩から叱咤も、入江がはまった闇営業の落とし穴

連載「上方芸能ここだけの話」

中西正男dot.#中西正男
「…アレ、どうなっていくんですかね?」

 仕事柄、仕事なりプライベートなりで、ほぼ毎日誰かしら芸人と話をする。所属事務所、年齢層、お笑いのジャンル問わず、会えば必ず出るワードがある。それが“闇営業”だ。

暴露ネタの封印を危惧する声も

 発端は7日発売の「フライデー」の記事。その中で使われた闇営業という言葉のインパクトが非常に強く、その後も、続報的な記事が出てきたこともあり、大きな騒動に発展している。

 事務所を通さずに芸人が直接依頼主から仕事を引き受け、ギャラも事務所を介さずに直接もらう。相手から直接仕事をもらうことから“チョク”という言葉でこのような仕事を呼ぶのが芸人の中では一般的だ。

 ただ、呼び名は何にせよ、芸能事務所としては決して礼賛すべきことではないし、認めるわけにもいかない。

 というのも、芸人という商品を管理し、トラブルが起こらないように依頼主と交渉し、きちんとイベントを成立させ、その対価として依頼主が支払った額の何割かをマネジメント料として取る。これが芸能事務所の根幹。そこを無視するチョクを許すわけにはいかない。

 ただ、ただ、僕がお笑いを中心に20年間取材をしてきた中で、正直な話、チョクが「滅多に目にしないレアケース」という風には感じていない。まだ仕事が少ない若手が、かわいがってもらっている社長から、ある種の“厚意”として話を振ってもらう。そのようなケースは実際に目にしてきた。

 今回の騒動の場合、このチョクの依頼主が反社会的勢力とされ、経緯はともかく、結果的にそこと接点を持ってしまった。そこが最大の問題であり、絶対にあってはならないことが起こってしまったわけだが、ここにこそ、チョクの危険性が集約されてもいる。

 間に事務所が入って精査をしていない分、相手の素性を担保するものがない。そして、何かしらトラブルが起こった時に、騒動を解決する立場の人間もいない。チョクならではのリスクが最大に悪い形で出たと言わざるを得ない。

 今回の騒動の発端となったのは入江慎也の行動だったが、入江とは取材を通じて交流があり、番組共演なども度々してきた。個人的には、筋を通すしっかりとした好青年という印象しかない。

 一例を挙げると、今年の4月18日午後12時16分。携帯電話に着信があった。画面には“カラテカ・入江慎也”と表示が出ていた。

 話の内容は、以前入江から紹介され、僕の連載でインタビューした人物の近況に関する報告だった。

「取材をしていただいた中西さんには、お伝えしないといけないと思いまして」

 義理堅く筋を通す。誰もが大切だと分かっているが、なかなか徹底できないことを徹底する。それが芸人と並行して経営しているコンサルタント会社「イリエコネクション」がうまくいっている秘訣なのだろうと改めて思った瞬間でもあったが、入江が口癖のように常に言っていた言葉があった。

“行った先に何かある”。

 疲れていても、忙しくても、積極的に人付き合いをしていけば、行った先に思いもよらぬ出会いやチャンスがある。実際に入江の経験から紡いだ言葉だった。

 1週間の会食スケジュールを見せてもらったこともあったが、まさにこの言葉を守るように、あらゆる業種の社長さんやプロフェッショナルと精力的にアポを入れていた。

 入江のみならず、この言葉は「イリエコネクション」の社員にも社是的に伝えられており、入江以外からもこの言葉を頻繁に耳にした。

 ただ一方で、この言葉にあまりにも実直に動き続け、人脈づくりを進めていく入江の姿勢に疑問を抱いたり、不安を感じていた芸人仲間の声も聞こえてきてはいた。僕が直接聞く限りでも、10人以上の芸人が入江のスタイルを心配していた。

 今から数カ月前、入江が絶大な信頼を寄せていた先輩芸人から激しく叱責されたという話も聞いていた。本業のお笑いをおろそかにして会社経営や人脈作りに時間を傾けすぎというのが怒りの骨子だったと聞くが、周りが警鐘を鳴らしていたのは間違いない。

“行った先に何かある”

 この言葉にあらゆる意味が付帯し、延々と頭の中でリフレインしている。

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中西正男

中西正男

中西正男(なかにし・まさお)/芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「おはよう朝日です」(ABCテレビ)、「バイキング」(フジテレビ)などに出演中。

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