金銭や物品の受け渡しだけではなく、「約束」するだけで違法の可能性がある。ある地方公共団体の選挙担当職員は、今回のプレゼント企画の話を聞いて「そんなことしてるんですか!?」と驚いていたが、それも無理もないことだ。

 一方で今回のコラボ企画は、自民党の甘利明選対委員長がリーダーを務める「#自民党2019プロジェクト」が問い合わせ窓口になっている。公選法では、政治家や立候補者に比べて政党による寄付の規定は少なく、グレーゾーンが多い。東京工業大学の西田亮介准教授は10日にツイッターで、「#自民党2019 について。自民党広報の割と優れた創意工夫の範囲内。いまのところ違法性も、サブリミナル等倫理的に問題のある手法も認められない。政治広報といったとき、これしか目に入らないのは他党の展開不足もある。さすがにこれだけで批判するのはどうか。むしろ積極的かつ健全に競争すべきでは」と述べている。

 とはいっても、政党であれば有権者にTシャツを配っても大丈夫なのか。これについて総務省は、「公選法の199条の3項に、政治家や候補者が所属する団体についての規定がある」としたうえで、「選挙区内の有権者に候補者の名前が類推されるような方法で寄付をしてはならないとされています」(総務省選挙課)と説明する。ただ、今回のケースが該当するかについては「総務省としては判断する立場にありません」と話す。

 選挙違反の摘発は、選挙が終わった後に実施されることが多い。裏を返せば、7月下旬に予定されている参院選の直前に、行政機関が政治活動に影響を与えるような見解を出すことは難しい。政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授は、「買収の一歩手前の行為。法の不備に乗じて道義的に問題がある活動をするのはいかがなものか」と苦言を呈す。一方で、「ただ今回のケースでは、企画に応募したり仮に当選してTシャツを受け取ったりしても、『寄付を要求した』とまでは言えず、違法だと判断される可能性は低いでしょう」と話す。

 公職選挙法は、あらゆる選挙が「公正かつ適正」に実施されることを確保し、民主政治の健全な発達を目指す目的で作られている。つまり、資金力や政治的影響力のある人物が、選挙で買収などの行為で有利にならないよう、金銭や物品の受け渡しは厳しく制限されている。総務省が実施している選挙の「3ない運動」では、「贈らない! 求めない! 受け取らない!」を合言葉に、政治家や有権者に寄付禁止のルールを守るよう呼びかけている。

(AERA dot.取材班)