事務所との契約を解除されたカラテカの入江慎也 (c)朝日新聞社
事務所との契約を解除されたカラテカの入江慎也 (c)朝日新聞社

 芸人の闇営業が話題になっている。写真週刊誌「FRIDAY」2019年6月21日号で、宮迫博之ら吉本興業の芸人数人が事務所を通さずに「闇営業」をしていたことが報じられた。彼らが参加したパーティーは大規模な振り込め詐欺グループの忘年会だった。そのメンバーの多くはこの後に逮捕されていた。この詐欺グループには暴力団関係者も在籍していたという。

【お笑い芸人「闇営業」の本当の闇とは?】

 この報道を受けて、よしもとクリエイティブ・エージェンシーは芸人たちに事実関係を確認。芸人たちをこの会に招いたカラテカの入江慎也は事務所との契約を解除されることになった。宮迫や田村亮などこの会に参加したとされるほかの芸人は、このパーティーで金銭は受け取っていないと釈明したものの、その軽率な行動を謝罪した。

 もちろん、暴力団との交際は芸能人にとって絶対的なタブーである。特に、よしもとクリエイティブ・エージェンシーではこの問題に厳しく目を光らせている。2011年に人気絶頂だった島田紳助がそれに絡んで引退しているからだ。週刊誌で暴力団との交際が報じられ、紳助自身はそれを否定していたものの、自らの意志で引退を選んだ。

 入江は「相手が犯罪集団とは知らなかった」と弁明しているが、仮に知らなかったとしても、反社会的勢力を相手にして事務所を通さない営業を勝手に進めていたとすれば、芸能人として責任は免れないだろう。

 今回の騒動で個人的に気になっているのは、「闇営業」という言葉がやたらと取り沙汰され、それ自体が深刻な問題のように扱われていることだ。もちろん、事務所側にとっては契約違反として原則的に認められない行為ではあるのだろうが、当事者ではない世間がそこまで問題視するようなことではない。暴力団関係者との交際が問題であるということと、闇営業そのものが問題であるということは区別して論じる必要がある。

 そもそも、お笑いの世界では、闇営業というのはちょっとした「おもしろワード」として扱われてきた。バラエティ番組でもお笑いライブでも、芸人のトークの中にはしばしば闇営業という言葉が出てくる。「やってはいけないことだけどみんなやっているよね」という程度の含みを持たせて、あえてネタにしているのだ。それがタブーに触れる感じがして面白かったりする。「お前、闇営業してるだろ」「やめろよ!」というような芸人同士のやりとりは、お笑いを見ている中では珍しくも何ともない。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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事務所がOKを出せばネタになるのが普通