一方のハードウェアキャリブレーションは、モニターに合わせた専用ソフトを使用するので、そのソフトが対応しているキャリブレーターを使用する。手順は、ソフトウェアキャリブレーションとほぼ同じ。ただしキャリブレーションセンサーでやっていることは異なる。ディスプレーの特性そのものを可能な限り狂いの少ない状態に調整し、パソコン側で補正が要らないモニターの状態を反映させたICCプロファイルを作成する。パソコン側での補正による画質低下の心配が皆無となるハードウェアキャリブレーションは、正しい色のための最善の方法だ。

■高価なディスプレーをとりあえず信じてみる

 色再現の正しさを信じられるディスプレーを買うのも方法の一つだ。ハードウェアキャリブレーションに対応しているような仕事で色を扱うなど正確な色が必要な人向けのカラーマネジメントディスプレーなら、キャリブレーションなしでも色の正確性が期待できる。こうしたディスプレーの「sRGBモード」などを利用するのだ。ただし、カラーマネジメント向けなら何でもいいわけではなく、そこは財布との相談。自分が信用できるメーカーの可能な限り高価なディスプレーを使うことも、正しい色で安心して写真を楽しむためのディスプレー選びの王道。例えばEIZOのカラーマネジメントモニターColorEdgeのCGシリーズなら、キャリブレーションセンサーまで内蔵なので長期間の運用で正しい色を維持し続けるのは容易。NECディスプレイソリューションズのカラーマネジメントモニターも、外部キャリブレーションセンサーなしに、長期間の安定した色の正確さが確保できる工夫が凝らされている。

 購入直後は出荷時の完璧な調整で大満足のカラーマネジメント向けディスプレーでも、プリントとの色合わせで使い始めには感じなかった不満を感じたり、あるいは漠然と「そろそろ必要なのでは?」と不安を感じたりしたならキャリブレーションセンサーも必要だ。

 キャリブレーターによる測色のかわりに、目視でICCプロファイルを作る簡易的なソフトウェアキャリブレーションの方法もWindowsやmacには用意されている。結果がどれぐらい信用できるかは、自分の目をどれだけ信用できるかで決まる。明らかに色調バランスなど不自然だけれど、余計なお金は使いたくないというケースでの実用性は侮れない。ただ、簡易的といってもICCプロファイルを使ったカラーマッチングの一種なので、キャリブレーションセンサーを使ったキャリブレーションと併用してはいけない。ICCプロファイルの二重掛けは絶対にやってはいけない。(解説/まつうらやすし)

アサヒカメラ2019年6月号より抜粋