同じデータでもプロファイルによって表現する色が変わる。例えば、sRGBとより色域が広いAdobe RGBでは、「0.255.0」(緑の原色)というデータでも違う緑になる(イラスト/やまもと妹子)
同じデータでもプロファイルによって表現する色が変わる。例えば、sRGBとより色域が広いAdobe RGBでは、「0.255.0」(緑の原色)というデータでも違う緑になる(イラスト/やまもと妹子)
写真上はPhotoshopカラーマッチング対応ソフトウェア。写真下はフォト(Windows10標準)カラーマッチング非対応ソフトウェア。Adobe RGBのICCプロファイルを持つ画像データでも、非対応のソフトウェアではsRGBとして扱ってしまう。これではディスプレーのICCプロファイルが正しくても絶対に適正な色にならない。表示・レタッチするソフトウェアの対応が肝心。カラーマッチング非対応のソフトウェアでは、広い色域のディスプレーでsRGBの画像を表示すると派手めに、逆に色域の狭いディスプレーでAdobe RGBの画像を表示すると地味めに表示されてしまう(撮影/まつうらやすし)
写真上はPhotoshopカラーマッチング対応ソフトウェア。写真下はフォト(Windows10標準)カラーマッチング非対応ソフトウェア。Adobe RGBのICCプロファイルを持つ画像データでも、非対応のソフトウェアではsRGBとして扱ってしまう。これではディスプレーのICCプロファイルが正しくても絶対に適正な色にならない。表示・レタッチするソフトウェアの対応が肝心。カラーマッチング非対応のソフトウェアでは、広い色域のディスプレーでsRGBの画像を表示すると派手めに、逆に色域の狭いディスプレーでAdobe RGBの画像を表示すると地味めに表示されてしまう(撮影/まつうらやすし)
ソフトウェアキャリブレーションは表示側で調整するので、ノートパソコンなど幅広く使える。ハードウェアキャリブレーションは、すべてが専用(対応)になるが、ハードウェア的に校正し、パソコン側での補正が不要なので画質劣化の心配がない(イラスト/やまもと妹子)
ソフトウェアキャリブレーションは表示側で調整するので、ノートパソコンなど幅広く使える。ハードウェアキャリブレーションは、すべてが専用(対応)になるが、ハードウェア的に校正し、パソコン側での補正が不要なので画質劣化の心配がない(イラスト/やまもと妹子)

 そもそも、ディスプレーの色が正しくないと何がいけないのだろうか。

【Adobe RGBの写真は対応ソフトが不可欠! 比較写真はこちら】

 一つは、他のディスプレーやプリンター出力と色がそろわないという、カラーマッチング上の問題だ。印刷したとき画面とプリンターの色が違ったり、せっかくレタッチした写真をネットにアップしても、自分が想定した色と違って見られたりすることになる。もう一つは、間違った色を見ているのかもしれないという疑心暗鬼が、レタッチ時に自信を揺るがせて写真を楽しめなくなること。

 このどちらかに心当たりがあるのなら、改善が必要だ。逆に使っていて不満や不安がないなら、その人の要求レベルでの正しい色は出ているといえる。大きく色が違わないプリンターと一致しているなら、あまり気にしないという考えもある。

■ICCプロファイルとディスプレーの対応

 一方で、正しい色が出ているという確信が欲しい人もいるだろう。プロはもちろん、趣味の道ならなおのこと。そこで避けて通れないのが「ICCプロファイル」だ。

 ICCプロファイルの役割は、「理屈上の色」と「その装置で出せる色」の整合性をとることにある。sRGB(エス・アールジービー)やAdobe RGB(アドビ・アールジービー)などは、前者の理屈上の色の規格だ。画像データやパソコンソフトでは、この「理屈上の色の規格」で色を取り扱う。一方、ディスプレーやプリンターは、データ上の色をそれぞれが再現できる範囲で、うまく調整して収める。

 これらをうまく調整するのに必要な情報こそが、画像データにも付加され、ディスプレーやプリンター(プラス用紙)ごとに用意される、ICCプロファイルだ。このICCプロファイルに基づいてカラーマッチングが正しく機能したときのディスプレー表示が正しい色だ。

 実際には画像に埋め込まれたICCプロファイルに基づいて、表示するソフトウェアがディスプレーのICCプロファイルに沿って、できるだけ色に差が出ないように調整している。

 液晶ディスプレーでsRGBやAdobe RGB対応と書いてあることがある。大きく二つの意味がある。sRGBとAdobe RGBでは使う色の範囲(色域)が異なる。「sRGBカバー率99%」とあれば、sRGBで決められた色のうち99%は再現できるという意味になる。

 一方で、特に調整しなくてもsRGBやAdobe RGBの画像データを表示できるモードが用意されていることも少なくない。実際こうしたモードを使うだけでも、大きく色が外れていないことが多い。色のことで困っていない&不安も不満もないなら、何もしないことも選択肢の一つだ。以下で説明していくのは、そのような状態を実現するためにディスプレーの色を正しく出す必要がある場合で、既に目的地にいるのなら余計なことをしないことも賢い選択だ。正しい色のために、何かしなければならないという強迫観念は、負のスパイラルを生むこともある。あまり追い込まず、気軽に色を考えることも、ディスプレーの色を正しく出すためのコツの一つだ。ただし、その場合でもディスプレーにドライバー/ICCプロファイルが付属しているなら、インストールしたほうがいい。

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sRGB対応モニターでも、Adobe RGBを扱える