第二に、深センなどを土台として垂直分裂的な、ハイテク製品を生み出すのに必要な企業群がすべてそろっていること。つまり、OSからCPUから半導体まで、中国国産オリジナルをつくれる能力がある。

 第三に、数百万人に及ぶ国内技術系の人材、海外に在留する数十万人に及ぶ留学生と「海亀」と呼ばれる帰国組など、日本の数十倍にもなる人材の厚みがある。

 第四に、ファーウェイの成長が続いた場合、アメリカとぶつかることになるだろうと2002、2003年当時から経営者が想定していること。つまり、心構えがあり、準備を進めている。

 第五に、トランプは4年の任期だが、中国共産党政権は、いましばらく権力基盤が揺らぎそうもないし、「一帯一路」や「強国化」構想という方針の転換は考えにくい。その方針に沿った企業、テクノロジーの発展の手綱を緩めることもない。ファーウェイには追い風が吹き続けるだろう。

 そして、最後に、彼らが中国人であることだ。少なくとも、中国は東アジア、東南アジア地域で数千年の間、基本的には覇権国であり続けた。政権の交代・転覆、戦争、武力闘争を権謀術数の中で無数に繰り返してきている。

 その間に文字を発明し、儒教哲学を創始し、羅針盤から火薬、印刷まで人類史を変えるイノベーションを生み出し、人類史最大の構造物を造りあげている。「100年の計」を実際にプランニングし、実行する能力は、世界の中でもスバ抜けている。

 確かにアメリカは科学技術・文化で20世紀から21世紀にかけて世界をリードした国だ。だが、しかし、その繁栄の期間はまだ100年ほど。建国して200数十年しかたっていない。中国のアジア的な老練さ、したたかさをトランプ氏は見誤っているのではないだろうか。

■トランプは「ファーウェイを育てる星一徹」である

「艱難(かんなん)汝を玉にす」と言う。

 1970年代に成立した、自動車をアメリカに輸出できなくなるほど厳しいと言われた大気汚染防止法「マスキー法」を、世界でいちばん最初にクリアしたのは日本のホンダだった。ホンダは、その厳しい法律をクリアする技術を育んでいったおかげで、4輪で1990年代の全盛を迎えることができたのだ。

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アメリカにはビジョンを感じない