この遅延時間でなら、かなり距離が離れていてもネットを通じた機器のコントロールができるようになり、自動運転や遠隔手術など命にかかわる分野などでも、しっかりと実用に耐えうるネットワークづくりが可能になるのである。

 次世代のネットワーク社会の根幹を握るのは、5Gの通信テクノロジー網だ。アメリカが焦るのもムリはない。ビッグデータの活用は中国が世界一。スマホの性能や売り上げも中国勢が韓国サムソンを急速に追い上げている。

■ファーウェイは苦境のあと発展するだろう

 トランプ大統領は、関税の引き上げで中国の力を削ぐように動いている。これは一時的には効果を上げている。たとえば日本のメディアと会見した任正非CEOは、そこで「2019年の第1四半期(1~3月)の売り上げは前年比で39%増だったが、4月になって25%に鈍化した。(輸出規制の影響で)通年で20%増には届かないだろう」(Business Insider Japan 2019.05.20 ファーウェイCEOインタビュー)と語っている。

 たぶん一時的には効果があるのだろうが、素人の頭で考えてみても、ムリが祟ると分かる。グローバルな供給網が世界中に張り巡らせられている現状では、1台の完成品をつくるのにも無数の部品が何か国もの供給国からやってくる。結局、風が吹けば桶屋が儲かる、の逆を行く、風が吹いて桶屋がつぶれる方式に、予想もしないダメージが世界経済そしてアメリカ自身を傷つけるだろう。

 そして、この貿易戦争(米中の覇権争い)は長期的には中国を利する。つまり、ファーウェイは苦境のあと、発展するだろうと私は踏んでいる。

 なぜか? 相手が、中国だからだ。中国人だからだ。

■アメリカは中国のアジア的なしたたかさを見誤っていないか

 そう考えるのは次のような理由だ。

 第一に、国内に膨大な市場である14億人を抱えている。ファーウェイの売り上げの50%以上は国外だが、いざとなれば、この巨大市場がある。ちょっとやそっとでは倒れない。

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中国の老練さとしたたかさ