■トヨタ+ホンダを合わせた研究開発費を投下する企業

 ファーウェイの技術力はどれほどのものなのか、知っている人は少ないだろう。私たちが接するファーウェイはスマホメーカーとしてのものだ。スマホメーカーとしてはサムソン、アップルに次ぐ出荷台数3位。

 しかし、本来ファーウェイは、電話交換機製造で産声を上げたように、「通信事業者向けネットワーク機器事業」が中心にある。携帯インフラでは、2018年にシェア2位(26.0%)に転落してしまったが、スウェーデンのエリクソン(シェア29.0%)とノキア(23.4%)の間に割って入る、世界のビッグ3の一角だ。

 ファーウェイで特長的なのが研究開発費への投資だ。2018年の彼らの研究開発費は153億ドル。日本円で1兆7千億円超。売上高約12兆円の14.25%を研究開発に投じているのだ。売上高30兆円のトヨタの研究開発費は1兆800億円(売上高に占める割合は3.6%)、ホンダの研究開発費が7900億円なので、ふたつの自動車メーカーを合わせた額に近い。

 研究開発費のベスト10の世界1位はAmazonで288億ドル、2位がアルファベット(つまりGoogle)で214億ドル、3位がサムソンで167億ドル、ファーウェイは世界4位である。ちなみに10位以内に日本企業は1社もない。

 ファーウェイが建設した研究開発部門は、深センから車で1時間半のところにある。ここの面積は120万平方メートル。日本の日建設計が手掛けたヨーロッパ風の街並みの中を専用の電車が走っており、いずれ3万人が研究開発に従事することになっている。規模的にはシリコンバレーのGoogle本社と同じである。日本企業が追いつくには素人目に見ても、少し不可能なレベルに達している。

■5Gを握るものが次のテクノロジー社会を握る

 ファーウェイは、早晩始まる5Gの時代に向けて強烈な投資を行い、BtoBにおいても、BtoCにおいても主導権を握る強烈な意志を示している。

 5Gは、通信速度が4Gの1Gbpsから10~20Gbpsという超高速通信に変わる。それ以上に大きく変わるのが5Gの遅延時間の短さだ。4Gではへたをすると数十ミリ秒の遅延が発生することがあったのだが、5Gではこれが1ミリ秒以下になると言われている。

 それが何か大きな変化を引き起こすのか。引き起こすのである。本格的なIoT(インターネット・オブ・シングス)、モノ同士が結びついて連携する未来が急速に進むと言われている。

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「我々は必ず頂点に登り詰める、そして生きて帰ってくる」