久保建英の年少デビューを喜んでばかりでは危険だ (c)朝日新聞社
久保建英の年少デビューを喜んでばかりでは危険だ (c)朝日新聞社

 令和の新時代到来を告げる大きな出来事が6月9日のエルサルバドル戦(宮城)で起きた。30歳のFW永井謙佑の2発で2-0とリードしていた後半22分。18歳になったばかりの新星・久保建英がついに国際Aマッチのピッチに立った。

 小学生時代をFCバルセロナ(スペイン)のカンテラ(下部組織)で過ごし、14歳になる直前に帰国してから各年代別代表に飛び級招集され、Jリーグでも順調にキャリアを重ねてきた彼がA代表デビューするのは時間の問題と見られていた。森保一監督も当初は慎重な姿勢を示し、5日のトリニダード・トバゴ戦(豊田)ではベンチ外にしていたが、今回は2点のアドバンテージと相手のプレー強度を踏まえ、「この状況なら余裕を持ってプレーできる」と判断したのだろう。久保自身も指揮官の期待に応えるかのように、登場から6分後には大迫勇也のパスを右のスペースで受けると、相手DF2枚の間をドリブルでかわし、左足シュートを打ちにいった。

「最後のキックのところで上を狙っていたのに、下に行っちゃったので」と本人もミスを悔やんだが、自分の一挙手一投足を冷静に客観視できるところはただ者ではない。そこは14歳年上の長友佑都も認めていた点。「人生2回くらいやってるんじゃないかと思うくらい、18歳にして自分が見えてる。『18歳でなかなかできないな』と思うようなコメントをしてるんで、大物が出てきたなという印象ですね」と目を丸くした。デビュー戦でここまで堂々たるプレーを披露できるのはやはり怪物たるゆえん。近未来の日本代表を担うと言われる逸材が残したインパクトは大きかった。

 とはいえ、今回のエルサルバドルは6月3日にハイチとアメリカで試合をして、日本に移動するという強行日程を強いられた。コンディションは万全ではなく、強度もかなり低く、日本にしてみればかなり御しやすい相手だった。それを考えると、久保が異彩を放ったといっても先々の成功が保証されているわけではない。実際、10代で代表デビューしてきた先人のほとんどがいばらの道を余儀なくされているのだ。

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念頭に置くべき市川大祐のケース