さすがにカメラ・レンズの現地購入を積極的には勧めないが、筆者はアメリカ西海岸方面に寄る機会が多かった時期には毎度同じカメラ店で、現地で動くのにちょうどよいサイズのカメラバッグや三脚をその都度調達していたことがある。買う買わないは別にしても海外のカメラ店では日本で見かけないアイテムや掘り出し物を発見することもあるので結構楽しい。時間が許せば2~3店巡ってみることをオススメしたい。

 それでも、旅は身軽に行きたい。そうなれば、旅程全てをシンプルにカメラ1台レンズ1本の組み合わせで撮り切るスタイルに挑戦してみるのも面白い。フィルム一眼レフ&16ミリ魚眼レンズだけで海外での年越しや、コンパクトデジカメ1台だけで北欧フィヨルドを周遊しながら撮影したこともあるが、疲労も少なく何より快適だし、いろいろなことに対して心の余裕も生まれ、いっそう撮影を楽しめた。せっかく海外に出かけるのだから1台だけではもったいないと思うのはわかるが、その気持ちをぐっとこらえて一回くらいは試してみる価値はあると思う。

 もしも絞り込む機材を自分で決められないのなら、阿弥陀くじを作って決めてみるのも一興だ。レンズはズームでなく単焦点のほうが割り切れて楽しめる。そんな潔いスタイルで試練の撮影旅を乗り切ったなら、きっと素敵な旅写真が撮れているはずだ。(解説/宇佐見 健)

アサヒカメラ2019年6月号より抜粋