日本代表・森保一監督 (c)朝日新聞社
日本代表・森保一監督 (c)朝日新聞社

 日本代表は6月5日にトヨタスタジアムでトリニダード・トバゴと対戦。3-4-2-1のシステムを採用して25本のシュートを記録したものの、ゴールを奪えずスコアレスドローに終わった。相手GKの頑張りや決定力不足は間違いなくあったにしても、新しいフォーメーションがまだまだ機能しない部分が大きかった。

「これまでも毎回試そうかなという思いは持って活動してきた中で、まずスタートでの形を安定させて、ベースが4バックでやることをより多くの選手に吸収してもらいながら、戦術理解をしてもらいながら、次のオプションを試そうと思っていたのが今のタイミングになりました」

 そう語る森保一監督は3バックのメリットについて「ウイングバックが守備のときはスペースを消せる。攻撃のときは高い位置で幅を持てるという部分で、相手のディフェンスを分散させることができる」と簡潔に説明した。

 選手にも3バックをテストする理由などは説明されたはずだが、どのようなシチュエーションで、何をするためにという明確な意図を見出すことは難しかった。まずは3バックという形の中で基本的なメカニズムをどう機能させるかに選手たちの頭がいってしまっていたように見える。

 もちろんシステムを固定化し、継続的に用いるならば、ベースを構築しながら相手FWの枚数や中盤の立ち位置、サイドバックの高さや幅に応じて臨機応変にポジショニングや距離感を調整することで、ある程度は対応できるようになることが重要だ。アジアカップの決勝ではカタールの3バックに対してプレスがはまらず、2失点してから左右のサイドハーフをシャドーの位置に締めてプレッシャーをかける形を取ったのが良い例だ。

 基本的には4バックの中でできる幅をさらに広げながら、意図の明確なオプションとして3-4-2-1を用いたほうがいいというのが筆者の見解だ。今回3バックを導入する意味は実用的なものだけでなく、選手の目先を変えてリフレッシュさせる意味合いもあるかもしれない。実質的に“森保ジャパン”がスタートしたアジアカップ、さらに今年3月の親善試合までは4-2-3-1をベースに継続的に連動や攻守の切り替えを植え付けていた。選手にその内容を聞いても、特に目新しいものはない、という回答が返ってくるばかりだったのだ。

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使い分けは現実的ではないが…