スタンドに入ると、どこからでもピッチが見やすい。とくに上層エリアは傾斜があり、ピッチの遠いサイドも見やすさが桁違いだ。

 国内外問わず、「ウルトラ」と呼ばれる熱狂的サポーター集団はゴール裏に陣取る。吹田でのガンバ・ウルトラの定位置は、ゴール裏の上層エリア。同様のサポーターシートとして振り分けられている下層エリアも使用可能であるが、あえて上層エリアを使っている。見やすさもあるだろうし、すぐ上方にある屋根に声援を反響させたいのも理由の1つにあるのではないか。 

 欧州では「一階席は二階席のファンにモノを投げ込まれて危険」 と言われる。今でこそ多くが全席指定席化となり、危険な箱はなくなりつつある。しかしイタリアなどではその名残も残っており、二階席から応援するウルトラがほとんどだ。伝統あるインテル同様「青黒」がチームカラーと言うこともあり、吹田のスタンドはセリエAの雰囲気をイメージさせる。

ーー強さと箱と熱の関係性。

 プロスポーツでは、「強さ=チーム力・タイトル」、「箱=スタジアム」、「熱=ファン・サポーター」が密接に絡み合うことが多い。

 どれが先に来るかはタイミングもあるが、欠かせない重要なファクターであることは間違いない。

 例えば、 鹿島アントラーズは、画期的な箱(鹿島サッカースタジアム)が熱気を生み、強さが生まれた。浦和レッズは熱過ぎるファンが箱を作り出し、強さがついていった。ガンバは自前選手を中心に構築した強さが熱を作り出し、新たな箱ができたという感じか。

 実は吹田ができても客足は、まだ思ったほどではない。平均観客動員数は、吹田完成以降で16年が約2.5万、17年が約2.4万人、18年が約2.3万人。ここ数年のガンバはタイトルにも見放されており、吹田へのアクセス面など、見えてきた課題もある。しかし今年は3万人超えの試合もいくつかある。この新スタジアムができてまだ3年、集客を伸ばす方法を模索している段階でもあり可能性も無限大。まさに「Jリーグ100年構想」の真っただ中なのだ。

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他にも関西にできつつある素晴らしいスタジアム