一方、今年からホンダがパワーユニットを供給する相手として新たに加わったレッドブルは、2010年から4連覇した経験を持つ強豪で、昨年もメルセデス、フェラーリに次ぐ4勝を挙げた実績のあるチーム。その実力は今年の開幕戦でいきなり表彰台を獲得したことでもわかる。

 世界最高峰のモータースポーツであるF1は各チームがすべて独自にマシンを開発しなければならない。そのため、動力源となるパワーユニットの性能も重要だが、そのパワーをタイヤを介して地面に伝える車体性能も同様に重要となる。5連覇中のメルセデスが今年も選手権をリードしているのは、パワーユニットの性能だけでなく、車体を含めたパッケージ全体の性能が高いからで、パワーユニットの性能ではメルセデスを上回ると言われているフェラーリが、今年いまだ勝てない理由もそこにある。

 したがって、レッドブルと組むホンダが今年優勝するためには、ホンダのパワーユニットの性能を上げることももちろん重要だが、大きな鍵を握るのは、やはりレッドブルの車体性能の向上である。ただし、メルセデスが握っているアドバンテージは大きく、今シーズン中にレッドブルがそれを超えることは簡単ではない。

 だが、レースは「車体性能+パワーユニット性能+ドライバーの能力=レース結果」というような単純な加算式ではない。レースにはアクシデントが付きもので、天候が急変することもある。それら想定外の出来事にいかに対応し、どう戦術を切り替えるかという判断によってレース結果は大きく入れ替わる。モナコGPでレッドブル・ホンダがメルセデスと繰り広げた優勝争いは、まさにそうだった。

 長いF1の歴史の中で、シーズンを席巻して選手権を制したチームはいくつかある。しかし、1950年代を除けば、全勝でタイトルを獲得したチームはいない。どんな強豪もシーズンに1度以上は必ず敗れる。そのチャンスを手にするためにレッドブル・ホンダに求められることは、直近のライバルであるフェラーリとの戦いに勝ち続けること。それができれば、レッドブル・ホンダに優勝するチャンスは必ず巡ってくる。モナコGPのように……。(文・尾張正博)