久保はもともとトップ下や2トップの一角を得意とするアタッカーでもある。まだ体が完成していない10代の段階では相手のプレッシャーが厳しい中央より、前を向いてボールを持ちやすいサイドの方が“安全”であることは確かだが、中央での起用もプランに入ってくれば、2年前のU-20W杯で共鳴性の高い攻撃を実現した堂安とのコンビ、さらに左サイドを基本ポジションとする中島とのコンビネーションも期待が高まる。

 ただ、それは可能性の話であり、そもそも南野や香川という本職の選手もいることから、まずはクラブで結果を出しているポジションでテストしながらA代表の環境に慣れさせることが基本方針と見ている。

 堂安、南野、中島のトリオ、あるいは原口や伊東にしても縦の加速性能は非常に高いが、そこにベクトルが向き過ぎてしまう傾向もある。そこにアクセントをもたらす存在として経験豊富な香川に期待がかかるが、久保も縦の打開力だけでなく、攻撃にタメをもたらせる“司令塔”の素地もある。そこがサイドアタッカー色の強い堂安や伊東、生粋のチャンスメイカーである中島とも異なる点だ。それだけに純粋なポジションの序列だけでなく、様々な組み合わせの中で可能性を探って行きたい。

 またセットプレーの左足キッカーとしては現時点でも日本人トップレベルにあり、特にCKに関しては本田圭佑が代表を引退したあとの左足キッカーが定着していない事情もあり、久保が引き続きA代表に招集されるためのキーになる可能性が高い。どちらかと言えばコパ・アメリカでより主力としての活躍が期待されるが、キリンチャレンジ杯から森保監督がどう起用法や組み合わせを探って行くのか、それに久保がどう応えて行くのか。興味深く見守りたい。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。