個人的にも、今でも耳から離れないフレーズがある。

 99年から2012年まではデイリースポーツの演芸担当記者としてたかしさんを取材してきた。親子ほど年の離れた記者に対しても常に謙虚に、そして少しでもこちらが見出しを立てやすいような話をこれでもかと提供してくれる。いきなり携帯電話に連絡しても、対応は丁寧そのもの。そんなたかしさんがこちらの顔を見るたびにかけてきた言葉があった。

 たかしさんの師匠である横山やすしさんとじっ懇だったデイリーの古参記者の名前を出して「●●さん、元気にしてはりますか?」と毎回尋ねられた。自分の師匠が世話になった記者に対する気遣いと心配り。そして、師匠への思い。こちらは何をしたわけでもないのだが、この一言から何とも言えない深みと温かさをいつも感じていた。

 生前、たかしさんは「(やすしさんに)1万発はどつかれました」と話していたが、今、師匠と久々に会って、どんな言葉を交わしているのか。それが気になると同時に、もう携帯電話を鳴らしてもその答えが聞けない。その事実が、どこまでも切ない。

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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