ナックルボーラーとしての投球スタイルを選択したきっかけは、肩を痛めて手術をしたことだった。

「球速が出なかったので、投げてみようかと思った。それから色々と試してみて、引退前は毎年のように精度も上がっていた。手応えもどんどんつかめていた」

 本格的にゲームで投げ始めたのは13年、BCリーグ・富山サンダーバーズ入団から。

「ナックルを投げ始めたのが、ちょっと遅かったかもしれない。客観的に年齢という物理的なことで、契約を躊躇していたチームもあったと思う。自分でもいろいろと考えた中での引退という答だった」

「でも今考えると、現役で契約したい、と声がかかったら、まだやったかもしれない。でもそこで横浜DeNAベイスターズからコーチ就任の声がかかった。そういうタイミングだったのかな、と思う」

 引退、そして横浜DeNAベイスターズ ファーム投手コーチへの就任。それはすべてがタイミングだった。そして決まったからには準備も周到におこなった。しかし実際に現場に出るとさまざまなことが起こる。

「コーチ就任時点に最低限、必要なものは取り入れて、吸収してきた。それだけの準備はした」

「実際に現場でコーチとしてやっていく中で、必要なものがさらに出てくる。その都度、それらをしっかり身につけていかないといけない。そういう気持ちで現在もやっている。そのためのアンテナは常に張っていないといけない。野球のみでなく、いろいろなところに落ちているから」

ーー選手と最善な接し方をするためにはコーチが柔軟であるべき。

「現在はSNSなど、様々な方法で自分の意見を発する場所がある。一人一人が自分に適している、好きな方法で考えを述べることができる。そういう環境の中で一緒に野球をやっている。それらに対応していくのも、我々に求められていることの1つ」

 野球界のみならず、一般的によく言われる世代間ギャップ。意思疎通方法が多様化している現代だからこそ、難しいことも多い。しかしお互いにそれらに順応し対応することの重要性をわかっている。

次のページ
今と昔は環境が違う