■リアルとヴァーチャルへの分裂現象

 普通と思われていた平凡な結婚が「夢」となり、夢に向かって努力する人が現れた。しかし、これだけ言葉が流布しても、恋人がいない独身者で婚活を行っている人は少数派で、多くの調査では、一割から二割ほどである。残りの大多数は、結婚できたらよいなと思いながら、何もしていないのが実情なのである。

 カップルで行動するのが一般的な欧米社会と違って、今の日本では、配偶者や恋人がいなくても、楽しく暮らすのに不自由はない。癒やしはペットに求める。誰かに話したい経験をすればSNSに投稿する。アイドルやスターのおっかけをして、恋愛感情を満たす。もちろん、性欲も恋人や配偶者以外の人で満たすことも可能だ。まるで、“結婚不要”であるかのように人生を設計する人々が確かに出現している。

 これは、自然現象なのだろうか。それとも、一時の特異現象なのだろうか。私は前者だと判断している。

 リアルに結婚する人と結婚不要で楽しく暮らす人とに分断され始めているのではないか。つまり、結婚という夢をリアルにしようとする人と、夢の世界に生きる人とに分裂し始めている気がする。結婚とはするもしないも、どのようにするかも人それぞれである。ただ、社会全体で見ると、その時々の経済状況や社会意識に影響されていることは確かだ。結婚とは、社会の鏡にほかならない。令和の結婚はどのように進むのであろうか? 社会学者として、注視していきたいと思っている。